企業の防災備蓄品は個別配布と共用備蓄のどちらがいい?配布方式と管理方法を比較

企業の防災備蓄品の個別配布と共用備蓄を比較した画像。従業員ごとの防災用品の配備と、オフィスの共用備蓄棚での一括管理を対比し、配布方式と管理方法の違いを紹介

備蓄をそろえたあと、総務の判断が止まるのが「配り方」です。全員の席に配れば、いざというとき確実に手元にある。でも入退社のたびに回収と再配布が発生し、期限管理が追えなくなる。かといって備蓄庫にまとめると、担当者が不在の夜間に誰も取り出せません。

この記事は、個別配布・フロア別・共用備蓄の3方式を比較し、条件分岐で自社の方式を決め、発災後の受け渡しと配布後の管理まで設計できるよう整理したものです。品目と必要数量、費用、保管スペースの計算は、それぞれ専門の記事に分けています。

結論|二択ではなく、品目で分けるハイブリッド

IPIC SONAE編集部の標準推奨

個別配布か共用備蓄かの二択ではなく、品目で分けるハイブリッドをおすすめします。発災直後に本人がその場で使う必要があるものは個人または各フロアへ。数量が大きいもの、共用設備として使うものは共用備蓄へ置きます。

備蓄品は、使うタイミングや管理方法が品目によって異なります。ヘルメットや携帯照明は「数秒で手が届くこと」が価値になります。飲料水や非常食は「人数分を確実に確保し、期限を管理できること」が価値になります。すべてを同じ場所に保管すると、取り出しやすさと管理のしやすさを両立できない場合があります。

ただし例外があります。施設の収納に余裕がない、フリーアドレスで席が固定されていない、個人別の期限管理ができる体制がない。こうした条件では、個別配布を減らしてフロア別や共用に寄せる判断が合理的です。次章以降で、条件ごとの分岐を具体化します。

配布方式を一律に義務づける法令は確認できません
東京都では条例により、従業者の施設内待機を維持するための3日分の備蓄が事業者の努力義務とされています。ただし、それを個人へ配るか共用で保管するかという配布方式まで一律に定めた規定は確認できませんでした。国のガイドラインでも、事前配布は「検討する」項目として挙げられています。自社の条件で決めてよい領域です。

この記事は配布・管理方式に集中します。品目と必要数量は企業の防災備蓄ガイド、家庭も含めた備蓄品の全体像は防災備蓄品リスト完全ガイドをご覧ください。

3つの方式を8つの観点で比べる

評価は定性的に示します。金額は施設条件と品目で変わるため、ここでは相対的な傾向のみです。

※スマートフォンでは表を左右にスクロールできます。

観点 個別配布
(各席・個人ロッカー)
フロア別
(各階の共用棚)
共用備蓄
(備蓄庫に集約)
取り出し速度 最も速い。本人が自分で取る 速い。同じ階で完結する 遅い。階をまたぐ移動が発生
配布の負荷 平時に配布済み。発災後の配布作業が不要 フロア担当が開錠して配る 搬送と配布に人手と時間がかかる
入退社時の管理 負荷が大きい。入社ごとに配布、退職ごとに回収 小さい。人数の増減に台帳で対応 最も小さい
必要スペース 分散するため集中した保管場所が不要 各階に小規模な収納が必要 まとまった保管場所が必要
期限点検 難しい。全席を回るか、本人任せになる 各階をまとめて点検できる 最も容易。1か所で完結
欠品・不足のリスク 持ち帰り・紛失・未返却で目減りする フロアの在席人数が想定を超えると不足 総量は確保しやすいが、届かないリスクが残る
衛生面 個人専用のため共用による懸念が少ない 配布時の受け渡し手順が必要 同左。配布担当の手指衛生を含めて設計
費用の傾向 個人別の配布記録・交換対応が必要。追加在庫が生じる場合もある フロア別の収納設備・点検工数が必要 共用庫の設備・配布担当・搬送工数が必要

表を見ると、個別配布は発災直後に強く、平時の管理に弱い。共用備蓄はその逆です。フロア別はその中間にあり、特に複数フロアの施設で効いてきます。

費用の比較では、まず対象人数・品目・必要数量を同じ条件にそろえます。個別配布だから必ず必要数量が増えるわけではありません。方式による差は、追加在庫、収納設備、配布・点検・更新の工数、紛失・破損への対応などを別に見積もって判断してください。試算の方法は企業の防災備蓄にかかる費用にまとめています。

方式を決める5つの確認

比較表だけでは決まりません。品目ごとに、次の5つを順に確認してください。

  1. 発災直後に、本人がその場で使う必要があるか
    • 必要がある(頭部保護、足元の保護、暗所での移動)→ 個別配布またはフロア別の候補。②へ
    • 必要がない(水、食料、毛布、衛生用品の多く)→ 共用備蓄の候補。⑤へ
  2. 席は固定されているか
    • 固定席→ 個別配布が成立する。③へ
    • フリーアドレス・シフト制→ 個人ひも付けが維持できないためフロア別を基本に。③へ
  3. 担当者が不在のとき、取り出せるか
    • 取り出せる(本人の手元、または施錠しない収納)→ 方式を維持。④へ
    • 取り出せない(施錠され鍵の所在が1人に依存)→ 鍵の運用を直すか、個別・フロア別へ寄せる。④へ
  4. 個人別の期限管理ができる体制があるか
    • できる(台帳に配布先と期限を記録し、通知・交換を回せる)→ 個別配布を維持
    • できない→ 期限のある品目は共用へ戻す。期限管理の不要な品目のみ個別配布にする
  5. 施設の安全・収納に制約があるか
    • 制約が大きい(収納が確保できない、高層階でエレベーター停止時に届かない)→ 共用へ集約しつつ保管場所を分散し、配布動線を設計する
    • 制約が小さい→ ①〜④の結論どおりに配備

判定のまとめ

条件 推奨方式 判断の理由
直後に使う + 固定席 + 期限管理ができる 個別配布 取り出し速度を最優先でき、管理も回る
直後に使う + フリーアドレスまたはシフト制 フロア別 個人ひも付けが維持できないため、場所にひも付ける
直後に使う + 期限管理の体制がない フロア別 点検をまとめられる単位まで集約する
直後には使わない + 数量が大きい 共用備蓄 総量の確保と期限管理を優先する
品目によって上記が混在する ハイブリッド 多くの企業がここに該当する

IPIC SONAE編集部の考え方どの方式が優れているという根拠はありません。決め手になるのは、自社の勤務形態と管理体制です。方式を先に決めてから品目を当てはめると、どこかで無理が出ます。品目ごとに5つの確認を通してください。

何を個別・フロア別・共用に置くか

品目ごとの配備先の目安です。施設や製品によって例外があるため、前章の5つの確認で上書きしてください。

※スマートフォンでは表を左右にスクロールできます。

品目 配備先の目安 理由と例外
ヘルメット 個別またはフロア別 揺れが収まった後の移動時に取り出せる場所へ。固定席なら個別配布、フリーアドレスや来訪者が多い施設ならフロア別も候補。置き場所の決め方は防災ヘルメットはどこに置く?を参照
携帯照明 個別配布 停電時は各自が別々に動く。電池の期限管理を台帳に含める
軍手・手袋 個別配布 かさばらず期限の管理負荷が小さい
常用薬・眼鏡等 本人が各自で用意 会社が配布する品目ではありません。必要性は個人ごとに異なります。会社は「各自で備えること」を案内するにとどめ、健康情報の申告を求めないでください
飲料水 共用+フロア別 数量と重量が大きい。総量は共用備蓄に置き、各階に初日分を配置する分割が現実的
非常食 共用+フロア別 同上。アレルギー対応食は別枠で管理し、該当者に確実に届く経路を決める
簡易トイレ フロア別 使う場所の近くに置く。各階のトイレ前収納が基本。予備は共用備蓄庫へ
衛生用品 フロア別 トイレの使用回数と連動する。手指の清拭用品、ごみ袋、使い捨て手袋
毛布・保温シート 共用備蓄 待機が長引いてから使う。待機スペースへまとめて搬送する
ラジオ・拡声器 共用備蓄 共用設備として使う。個人に配っても意味がない
工具・救急用品 共用備蓄 使用には知識が要る。扱う担当を決めて保管する
来訪者用 受付・会議室 来訪者が滞在する場所に置く。従業員用とは別枠で数える

個人専用品と共用できる物を混ぜないでください
ヘルメットは利用者に合うサイズと装着方法の確認が必要で、個別配布だけでなくフロア別配備も選択肢です。常用薬は本人が管理するもので、会社の共用在庫では代替できません。反対に、ラジオや工具を個人に配っても活用されません。品目ごとに、利用者への適合性と取り出しやすさを確認して配備方式を決めてください。

施設・勤務形態別の判断

施設・勤務形態 基本の組み合わせ 設計で注意すること
固定席オフィス 個別配布+共用備蓄 個別配布の台帳を席番号ではなく個人にひも付ける。席替えの運用を決めておく
フリーアドレス フロア別+共用備蓄 個人ひも付けを諦め、場所にひも付ける。ロッカーがある場合は個人ロッカーへの配布も選択肢
シフト制・24時間稼働 フロア別+共用備蓄 最も人数が多い時間帯を基準にする。夜間に施錠された場所へアクセスできるかを必ず確認
複数フロア フロア別を厚く エレベーター停止を前提に、各階で完結できる量を先に置く。階段での搬送負担を考慮
来訪者の多い施設 受付・会議室に分散 来訪者は社内の配置を知らない。案内する担当と代行者を決める
工場・倉庫 作業エリア別 作業中の滞在場所が固定されている。詰所や休憩所を配布拠点にする
学校・自治体施設 共用備蓄を厚く 在館者が日によって大きく変わる。総量での確保と、配布の体制づくりを優先する

複数の拠点がある場合、拠点をまたいだ数量の配分は別の設計になります。事業所が複数ある企業の防災備蓄で扱っています。

100名・3フロアの配置・配布マトリクス

説明用の仮定以下は架空のオフィスです。実在する施設のデータではありません。自社の条件に置き換えてご利用ください。

前提

項目 設定 補足
備蓄対象人数 100名 最大同時在館の従業員数。在籍人数ではない
フロア別の在館人数 1F 40名/2F 35名/3F 25名 合計100名。総量と各階割当は同じ100名分で、重複していない
同時来訪者 1Fに最大8名 100名の内数ではなく別枠。1Fの受付・会議室で管理
予備在庫 共用備蓄庫に保管(数量は品目別に決定) 従業員100名分・来訪者8名分のいずれにも含まない追加分。破損・欠品などの用途を決め、割合を一律に設定しない
備蓄場所 各席/各階の共用キャビネット/1F奥の共用備蓄庫 各階キャビネットの位置:1F受付脇、2F給湯室横、3F階段前
管理体制 総務A(全体)/1F受付B/2F庶務C/3F庶務D 各担当に代行者を1名ずつ設定

このモデルの対象は従業員100名+同時来訪者8名=計108名です。従業員のフロア配分(40+35+25名)は100名の内訳であり、追加人数ではありません。予備在庫は108名分とは別に、品目ごとの破損・欠品リスクや補充体制を見て決めます。各フロア分と共用庫分を合算する際は同じ備蓄品を二重計上しないでください。

必要数量そのもの(水何L、食料何食、トイレ何回分)は、ここでは算定しません。企業の防災備蓄ガイドの算定表をご利用ください。

品目別の配置・配布マトリクス

※スマートフォンでは表を左右にスクロールできます。

品目 配備方式 誰が管理 誰が取り出す 誰へ渡す 受け取る場所 予備の置き場 記録すること
ヘルメット 個別またはフロア別 総務A/各階担当 本人/各階担当 本人または在館者 各席または各階の所定収納 共用備蓄庫 配布先・サイズ・交換予定年月
携帯照明 個別配布 総務A 本人 — 各席の引き出し 共用備蓄庫 配布先・電池の交換予定
飲料水 フロア別+共用 各階担当B/C/D 各階担当 在館者全員 各階キャビネット前 共用備蓄庫 配布数・残数・配布時刻
非常食 フロア別+共用 各階担当B/C/D 各階担当 在館者全員 各階キャビネット前 共用備蓄庫 配布数・残数
アレルギー対応食 共用(別枠) 総務A 総務A 該当者本人 共用備蓄庫で直接 — 配布数のみ(該当者名は記録しない)
簡易トイレ フロア別 各階担当B/C/D 在館者が自分で — 各階トイレ前収納 共用備蓄庫 使用数・補充日
衛生用品 フロア別 各階担当B/C/D 在館者が自分で — 各階トイレ前収納 共用備蓄庫 使用数・補充日
毛布 共用備蓄 総務A 搬送担当 在館者全員 各階の待機スペース 共用備蓄庫 配布数・回収数
ラジオ・拡声器 共用備蓄 総務A 総務A — 共用備蓄庫 — 動作確認日
来訪者用 受付・会議室 1F受付B 1F受付B 来訪者 受付カウンター・会議室 共用備蓄庫 配布数のみ

担当者が不在でも回る代替手順

このマトリクスは、担当者がその場にいることを前提にしていません。各行について、次の代替を用意します。

  • 各階担当の代行者:1名ずつ指名し、キャビネットの場所と開け方を共有します
  • 鍵を要しない収納にする:各階キャビネットと各階トイレ前収納は施錠しません。施錠が必要な場合は、同じ階の2名以上が開けられる状態にします
  • 掲示で代替する:各階キャビネットの扉に「中身・数量・使い方・補充の連絡先」を掲示します。担当者がいなくても在館者が判断できます
  • 共用備蓄庫は複数名で開錠できるようにする:鍵の所在を1人に依存させません
  • 記録は紙で取れるようにする:停電でシステムが使えない前提で、記録用紙を各階キャビネットに入れておきます

発災後の受け渡しは3段階で考える

配布は、建物の安全が確認できてから始まります。段階を分けて、誰が何を判断するかを決めてください。

時間の経過だけで次の段階へ進めないでください
「発災から30分たったから配布開始」という運用にはしないでください。段階を進める条件は時間ではなく、建物と周辺の安全が確認できたかどうかです。安全が確認できない建物の中で待機させたり、備蓄を取りに行かせたりしないでください。

段階1|発災直後

この段階ですること
身の安全の確保のみです。誰も備蓄を取りに行きません。各席のヘルメットも、引き出しを開けるために身を起こさないでください。揺れが収まるまで、机の下などで身を守ります。
担当者・代行者
指示を出す担当はいません。全員が自分の身を守ります。
次の段階へ進む条件
揺れが収まり、その場で移動できる状態になったこと。
記録すること
なし。

段階2|施設の安全確認後

この段階ですること
建物と周辺の安全を確認し、施設内で待機できるかを判断します。待機できると判断した場合のみ、備蓄へのアクセスを確保し、配布を開始します。個別配布分は、この段階で各自が手元から取り出します。
担当者・代行者
安全確認:防火管理者または施設担当。待機可否の判断:総務A(代行者を事前に指名)。各階の配布:各階担当B/C/D(代行者を事前に指名)。
判断条件
建物の損傷、落下物、ガラスの飛散、設備の状態を確認します。安全が確認できない場合は、施設内待機を選ばないでください。国のガイドラインでは、行政機関からの一時滞在施設等の開設情報をもとに、従業員等を一時滞在施設等へ案内・誘導することが示されています。テナントビルでは施設管理者の指示に従います。
受け渡し場所
各階キャビネットの前。来訪者には受付または会議室で渡します。
記録すること
安全確認の実施者と時刻、待機可否の判断、配布開始時刻、各階の配布数。

段階3|施設内待機中

この段階ですること
追加の配布、衛生環境の維持、各階の補充、記録の継続です。非常用トイレの使用済み袋の一時保管、手指衛生の確保もここに含まれます。
担当者・代行者
各階担当B/C/D と代行者が交代で担当します。長時間に及ぶ場合は、担当を固定せず交代制にします。
判断条件
各階の残数が想定を下回った時点で、共用備蓄庫から補充します。補充の可否は、搬送経路の安全を確認したうえで判断します。
受け渡し場所
各階キャビネット前と、各階の待機スペース。
記録すること
追加配布数、残数、補充の実施、使用済み袋の保管場所と量、交代の記録。

担当者不在・夜間・停電・施錠への備え

配布方式を決めたあと、最後に確認するのがここです。平日の日中しか想定していない設計は、夜間や休日に機能しません。

想定する状況 起きること 備えておく代替策
担当者の不在 備蓄庫を開けられる人がいない 各担当に代行者を1名指名。鍵の所在を複数名で共有する
夜間・休日 在館者が少なく、総務が不在 施錠しないフロア別収納を基本にする。警備員や常駐スタッフへの周知
停電 電気錠が解錠できない。照明が消える 停電時の解錠手順を建物管理者に確認。各階に照明を配備
エレベーター停止 備蓄庫が別階にあると届かない 各階で完結できる量を先に配置する。階段での搬送担当を決める
施錠・鍵の紛失 開錠できず備蓄が使えない 予備鍵の保管場所を複数名で共有。施錠の必要性そのものを見直す
通路の閉塞 什器の転倒で備蓄庫へ行けない 備蓄庫前の什器を固定する。別経路を確認しておく
システム停止 台帳が参照できない 配置図と台帳の紙の控えを各階に置く

公的情報国のガイドラインは、高層ビルに所在する企業等について、エレベーターが停止した場合に備えて備蓄品の保管場所を分散させることを考慮するよう示しています。また、配布作業の軽減や個人の防災意識向上等の視点から、事前に備蓄品を従業員等へ配布しておく方法を検討することにも触れています。あわせて、保管されている備蓄品が避難通路を塞ぐ障害物となったり、スプリンクラー設備の放水ヘッドを塞いだりして、消防法令等の違反状態とならないようにする必要があるとされています。

配布拠点を増やすときは、避難動線を先に確認してください
各階にキャビネットを置く、通路に収納を追加する。こうした変更が、避難通路や防火扉の可動範囲にかかることがあります。配置を決める段階で、建物の管理者または防火管理者に確認してください。保管スペースの寸法計算と棚の選び方は企業の防災備蓄品はどう収納する?で扱っています。

個別配布後の管理責任をどう設計するか

個別配布では、配布後の所在確認や交換管理が課題になりやすいです。3年後に点検しようとしたら、誰に何を配ったか分からない。この状態を避ける設計を示します。

配布時に記録する項目

項目 内容 なぜ必要か
品目・型番 配布した製品を特定できる情報 交換時に同等品を選ぶため
数量 1人あたりの配布数 総量と現物を照合するため
ロット・製造年月 製品に表示されている識別情報 不具合が判明したときに対象を特定するため
期限・交換目安 賞味期限または交換の目安年月 通知のタイミングを決めるため
配布日 実際に渡した日 保管開始日を起点に数える品目があるため
配布先 個人を識別できる情報(社員番号など) 異動・退職時に追跡するため
管理責任の区分 会社が管理するか、本人が管理するか 点検と交換の役割を明確にするため
交換予定年月 次に交換する時期 年次の予算と作業計画に反映するため

記録するのは配布の管理に必要な情報だけにしてください。持病、常用薬、妊娠の有無といった健康に関する情報は、配布記録に含める必要がありません。配慮が必要な方への対応は、本人の任意の申告にもとづいて別の仕組みで行ってください。アレルギー対応食の配布でも、該当者名を配布記録に残さず、配布数のみを記録する運用が可能です。 一方、必要な人が確実に受け取れるよう、本人が申し出やすい窓口、代行担当、受け渡し方法を事前に決めます。個人情報の取扱いは必要最小限とし、閲覧権限を限定してください。

配布後に回す仕組み

  • 年1回の一斉点検日を決める:決めた日に本人が手元を確認し、結果を報告する方式を基本にします。ただし本人申告だけで現物確認を完了した扱いにはせず、必要に応じて担当者が現物を確認します。紛失・破損は随時報告し、期限前に交換できるようにします
  • 交換通知は期限の前に出す:期限の3か月前など、通知のタイミングを決めておきます。台帳から対象者を抽出できる形にしておきます
  • 未回収・紛失時の処理を決める:督促して回収できない場合は、代替品を配布し、台帳に「未回収」として残します。数量が合わないまま放置しないでください
  • 退職・異動の手続きに組み込む:退職手続きのチェックリストに「配布済み防災用品の返却または引き継ぎ」を追加します。これを入れていないと、人数分の確保が静かに崩れます
  • 席替え・レイアウト変更のときに確認する:個人にひも付けていれば席替えの影響はありませんが、席にひも付けている場合は所在を更新します
  • フリーアドレスへ移行するときは方式を切り替える:個人ひも付けが維持できなくなるため、フロア別または個人ロッカーへの配布に変更します

所有権と返却の扱い

会社が支給した防災用品の所有権や、退職時に返却が必要かどうかは、社内規程と配布時の条件によって決まります。法的に一律の扱いが定まっているものではありません。

IPIC SONAE編集部の提案配布時に、次の3点を文書で明示しておくことをおすすめします。あとから解釈が分かれる余地を減らせます。

  • 貸与か支給かの別
  • 退職・異動時の返却の要否
  • 紛失・破損時の取り扱い

規程の整備や文面については、社内の人事・法務部門にご相談ください。

配布方式の点検チェックリスト

年1回、次の項目を確認してください。印刷して点検記録としてお使いいただけます。

方式の設計

  • 品目ごとに配備先を決めている:個別・フロア別・共用のどれかが品目ごとに決まっている
  • 個人専用品と共用品を分けている:常用薬は本人管理とし、ヘルメットはサイズ・利用者・配置場所を確認して個別またはフロア別で確保している
  • 来訪者用を別枠で管理している:従業員用の数量に含めていない
  • 勤務形態の変化を反映している:フリーアドレス化やシフト変更のあとに方式を見直した

アクセスと動線

  • 各担当に代行者を指名している:担当者不在でも取り出せる
  • 鍵の所在を複数名で共有している:1人に依存していない
  • 夜間・休日の体制を確認した:在館者が少ない時間帯でも機能する
  • エレベーター停止を想定した:各階で完結できる量を配置している
  • 停電時の解錠手順を確認した:電気錠がある場合の代替手順がある
  • 避難通路・防火設備を塞いでいない:建物管理者または防火管理者に確認済み

配布後の管理

  • 配布記録が最新である:品目・数量・ロット・期限・配布先・交換予定が記録されている
  • 期限切れが残っていない:交換通知のタイミングを決めて運用している
  • 入退社が台帳に反映されている:退職手続きに返却の項目がある
  • 健康情報を取得していない:配布記録に持病や常用薬を含めていない
  • 紙の控えがある:システム停止時でも配置図と台帳を参照できる

訓練

  • 配布の手順を訓練に組み込んでいる:実際に取り出して配ってみた
  • 代行者が手順を知っている:担当者抜きで訓練したことがある
  • 来訪者への案内を試した:社内の配置を知らない人へ案内できた
  • 非常用トイレの使用を訓練に含めた:企業の防災訓練で非常用トイレを使うには?を参照

配備方式から商品を選ぶ

配備方式が決まると、選ぶ製品の条件も変わります。以下は2026年10月時点の掲載情報です。仕様は変更されることがあるため、発注前に各商品ページでご確認ください。

個別配布に向く条件

各席の引き出しやロッカーに収まる薄さと、本人が自分で扱えることが条件になります。折りたたみ防災ヘルメット オサメットは収納時がA4サイズ・厚さ45mmで、引き出しへの分散配置に向きます。ただし展開の手順が1つ増えるため、配布時に一度展開して試してもらってください。展開の手順を省きたい場合は防災用軽量ヘルメットという選択肢もあります。数量とサイズ構成の決め方は法人向け防災ヘルメットの選び方にまとめています。

共用備蓄・フロア別に向く条件

まとまった数量を確保でき、期限管理の回数が少ない製品が向きます。非常用簡易トイレ「トイレのミカタ」は120回分と60回分があり、フロアの在館人数に合わせて組み合わせられます。非常食 26種 8日分は26食入りで、1人1日3食で換算すると約8日分にあたる量です。複数名分ではないため、フロア別に配置する場合は在館人数から必要セット数を計算してください。

このほか、備蓄用トイレットペーパー、衛生用品、防災ライトを取り扱っています。

配備方式に合わせた数量をご相談ください

個別配布分とフロア別・共用分の内訳が決まっていれば、それぞれの数量でお見積もりをご案内できます。方式を検討中の段階でのご相談も承ります。

補助金の申請代行、無料の現地診断、即日納品、分納の確約は行っておりません。納品条件は個別にご確認のうえご案内します。

よくある質問

Q. 個別配布と共用備蓄、どちらがよいですか?

品目によって分けるハイブリッドをおすすめします。発災直後に本人がその場で使うもの(ヘルメット、携帯照明、手袋)は個人または各フロアへ。数量が大きいもの、共用設備として使うもの(水、食料、毛布、ラジオ、工具)は共用備蓄へ置きます。ただし、フリーアドレスで席が固定されていない場合や、個人別の期限管理ができる体制がない場合は、個別配布を減らしてフロア別に寄せる判断が合理的です。

Q. 配布方式は法律で決まっていますか?

配布方式を一律に義務づける法令は確認できません。東京都では条例により3日分の備蓄が事業者の努力義務とされていますが、個人へ配るか共用で保管するかという方式までは定められていません。国のガイドラインでも、事前の配布は「検討する」項目として挙げられています。自社の勤務形態と管理体制で決めてよい領域です。

Q. 配布した備蓄品の所有権はどうなりますか?

社内規程と配布時の条件によって決まります。法的に一律の扱いが定まっているものではありません。貸与か支給か、退職・異動時に返却が必要か、紛失・破損時にどう扱うかを、配布時に文書で明示しておくことをおすすめします。規程の整備や文面については、社内の人事・法務部門にご相談ください。

Q. 退職時に回収すべきですか?

回収の要否は配布時の条件によります。回収する方針をとる場合は、退職手続きのチェックリストに「配布済み防災用品の返却または引き継ぎ」を入れてください。これを入れていないと、台帳上は人数分あるのに現物が減っていく状態になります。回収しない方針をとる場合も、その分を新たに補充する前提で数量を計画してください。

Q. フリーアドレスの場合はどうすればよいですか?

個人ひも付けの維持が難しいため、フロア別を基本にしてください。個人ロッカーがある場合は、ロッカーへの配布も選択肢になります。いずれにしても、席ではなく場所または個人に確実にひも付く単位を選んでください。席にひも付けると、レイアウト変更のたびに台帳の更新が必要になります。

Q. 共用備蓄庫の鍵はどう管理しますか?

1人に依存させないでください。複数名で所在を共有し、予備鍵の保管場所も決めます。夜間や休日に在館者が少ない時間帯でも開錠できるかを確認してください。電気錠の場合は、停電時の解錠手順を建物管理者に確認しておきます。各階のフロア別収納については、施錠しない運用を基本にすることをおすすめします。

Q. 来訪者用はどこに置けばよいですか?

来訪者が滞在する場所に置きます。受付カウンターの下、会議室の収納など、来訪者から見えず、担当者が取り出しやすい位置です。来訪者は社内の配置を知らないため、案内する担当と、その担当が不在のときの代行者を決めてください。数量は従業員用とは別枠で数えます。

Q. 配布の訓練はどうやればよいですか?

実際に取り出して配ってみてください。各階キャビネットを開け、記録用紙に書き、在館者へ渡すところまでを通しで行います。そのうえで、担当者を抜いた状態でもう一度試してください。代行者が手順を知らないことは、訓練をしてみて初めて分かります。非常用トイレを訓練に組み込む方法は企業の防災訓練で非常用トイレを使うには?で扱っています。

Q. 衛生用品も個別に配ったほうがよいですか?

非常用トイレの使用回数と連動するため、トイレの近く、つまりフロア別の配置が基本です。個別に配ると、使う場所と保管場所が離れます。ただし、マスクや手指の清拭用品のように各自が随時使うものは、個別配布と併用しても差し支えありません。

まとめ

配布方式は、二択で決めるものではありません。発災直後に本人が使うものは手元へ、数量が大きいものは共用へ。この分け方を品目ごとに通せば、自社の答えが出ます。

決め手になるのは、勤務形態と管理体制です。席が固定されているか。担当者が不在でも取り出せるか。個人別の期限管理が回るか。この3つが揃わないなら、個別配布を減らしてフロア別に寄せてください。

そして、配った時点では終わりません。誰に何をいつ配ったか、いつ交換するか、退職時にどうするか。ここまで設計して、初めて人数分の確保が維持されます。

まずは品目ごとの配備先を書き出し、各担当の代行者を決めるところから始めてください。防災を、『じぶんゴト』に。

執筆・監修|防災士 山根

アイピック株式会社所属。2024年に防災士資格を取得。IPIC SONAEで展開してきた製品の開発に携わり、商品開発で得た実務的な知見と防災士としての知識をもとに、防災情報を執筆・監修しています。

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