企業の防災備蓄にかかる費用はいくら?人数別の予算目安とコスト削減方法

企業の防災備蓄費用を解説する記事のメイン画像。飲料水・非常食・非常用トイレ・毛布などの備蓄用品と、30人・100人・300人規模の予算計画を示したイメージ

備蓄の予算を立てようとすると、「結局いくらかかるのか」が最後まで決まりません。セット商品は内容も保存年数もばらばらで、単純に比べられない。更新費用まで入れると金額が跳ね上がる。補助金が使えるのかも分からない。

この記事は、総務・BCP・購買のご担当者が、3日分を基本とした備蓄予算を積み上げ、更新費用まで含めた年次の金額を出し、補助制度の適用可否を確認し、稟議と見積依頼まで進められるよう整理したものです。公的機関の情報、市場価格の調査結果、編集部のモデル試算は、それぞれラベルで区別して示します。

結論|費用は3つの変数で決まる

備蓄予算を決める手順

1. 備蓄対象人数 × 想定日数 × 品目ごとの単価で積み上げます。セット商品の価格から逆算するのではなく、品目ごとの数量を先に確定させてから単価を掛けます。

2. 初期費用と更新費用を分けて見ます。保存年数が品目ごとに違うため、更新のタイミングもばらつきます。5年・10年・15年の累計で比べると、初期の単価差が逆転することがあります。

3. 補助金は購入前に確認します。多くの制度が事前申請・事前承認制で、購入後の申請は対象外です。対象品目も制度によって異なり、消耗品が対象外の制度もあります。

編集部のモデル試算水・主食・非常用トイレ・保温シートの4品目を3日分そろえる場合、1人あたり約6,415〜12,480円(税込・送料別、100名モデルの単価幅)です。100名なら約64.2万〜124.8万円です。これは比較条件をそろえた品目別単価の上下限を機械的に組み合わせた参考幅であり、実際のセット販売価格や法人見積価格の範囲を保証するものではありません。算定の前提は第3章で開示します。

なお、備蓄対象人数の決め方と品目別の必要数量は企業の防災備蓄ガイド|必要品目・人数別の備蓄量・管理方法で、家庭も含めた備蓄品の全体像は防災備蓄品リスト完全ガイドで扱っています。この記事は費用と予算に集中します。

費用に含める品目・別で見る費用

見積を比較できない原因のほとんどは、含まれている品目が揃っていないことです。まず比較の土台を固定します。

基本構成の4品目

国のガイドラインが数量の目安を示しているのは水・主食・毛布の3品目で、その他は物資ごとに算定するとされています。ここに、必要性が高く数量を算定しやすい非常用トイレを加えた4品目を、予算の基本構成とします。

品目 1人3日分の数量 数量の根拠
飲料水 9L(2L×5本相当) 公的情報1人1日3L
主食 9食 公的情報1人1日3食
非常用トイレ 15回分 公的情報成人の平均排泄回数1日5回
アルミ保温シート 1枚 公的情報1人1枚

基本構成に含めず、別で積む費用

以下は必要ないという意味ではありません。製品も数量の決め方も異なるため、基本構成とは分けて算定したほうが、見積の比較も予算の説明も正確になります。

区分 内容 積み方
衛生用品 トイレットペーパー、手指の清拭用品、ごみ袋、使い捨て手袋 物資ごとに算定。非常用トイレの使用回数と連動させる
照明・乾電池 懐中電灯、ランタン、電池 人数ではなく設置場所の数から算定
情報・電源 携帯ラジオ、非常用電源 拠点・フロア単位。必要負荷から算定
頭部保護 ヘルメット 同時在館人数から算定。法人向け防災ヘルメットの選び方で詳述
救急・敷物 救急医療薬品類、ビニールシート等 物資ごとに算定
配慮が必要な方の用品 アレルギー対応食、生理用品、介助用品 該当者の実数から。該当者がいる場合は基本構成と同列に扱う
保管什器 棚、備蓄庫、転倒防止金具 保管場所の条件から。初期のみ発生することが多い
物流費 送料、分納手数料、設置・搬入費 拠点数と納品先で変わる。見積時に必ず確認

30名・100名・300名の予算試算

市場価格の調査結果

市場価格調査2026年10月19日時点で、国内の通販サイトに公開されている防災備蓄品の価格を品目別に確認しました。以下はすべて税込・送料別の表示価格です。販売店名・商品名は掲載していません。

品目 調査した価格帯 試算に使う単価 価格差が生じる主な要因
保存水 2L 1本 約210〜570円 250円 保存年数(5年/10年/15年)、まとめ買いの数量
主食 1食 約470〜630円 500円 アルファ化米のみか、パンの缶詰・おかずを含むか
非常用トイレ 1回分 約70〜195円 120円 便袋付きセットの内容物(処理袋・手袋など)と保存年数
アルミ保温シート 1枚 約190〜1,320円 400円 アルミ蒸着シートのサイズ・厚さ・仕様。一般的な毛布は別価格

比較条件:保存水は2Lボトル、非常用トイレは便袋付きセット、保温用品はアルミ蒸着の簡易シート。毛布・凝固剤単体は価格レンジと人数別試算から除外しています。

調査日:2026年10月19日/対象:国内通販サイトの公開価格/税区分:税込/送料は含まない/算定方法:各品目のケース単価または1回単価に換算して比較。

この価格帯は「相場」や「全国平均」ではありません
調査した商品は内容物と保存年数が揃っていないため、平均値や中央値を算出していません。特に非常用トイレは、今回の試算では便袋付きの非常用トイレセットのみを比較対象とし、凝固剤単体(調査ログでは約30〜40円/回)は除外しています。アルミ保温シートの価格は一般的な毛布の価格ではありません。見積時には内容物・保存年数・送料を揃えてください。

人数別の初期費用

編集部のモデル試算上記の試算単価を使った積み上げです。実際の購入価格ではありません。人数はいずれも備蓄対象人数(在籍従業員数ではなく、最大同時在館人数に同時来訪者を加えた人数)です。

品目別費用 = 備蓄対象人数 × 1人3日分の数量 × 試算単価飲料水はケース(2L×6本)単位に切り上げてから金額を計算しています
品目 30名 100名 300名
飲料水
(2L×250円)
138本
34,500円
450本
112,500円
1,350本
337,500円
主食
(1食500円)
270食
135,000円
900食
450,000円
2,700食
1,350,000円
非常用トイレ
(1回120円)
450回分
54,000円
1,500回分
180,000円
4,500回分
540,000円
アルミ保温シート
(1枚400円)
30枚
12,000円
100枚
40,000円
300枚
120,000円
合計 235,500円 782,500円 2,347,500円
1人あたり 約7,850円 約7,825円 約7,825円

30名の飲料水が135本ではなく138本になっているのは、2L×6本のケース単位に切り上げたためです。ケース単位での端数は、必要量を下回らないよう常に切り上げます。

単価の下限・上限で見た幅

調査した価格帯の下限と上限で同じ計算をすると、備蓄対象人数100名・3日分の基本構成は次の範囲になります。

前提 下限単価 試算単価 上限単価
100名・3日分の合計 約641,500円 782,500円 約1,248,000円
1人あたり 約6,415円 約7,825円 約12,480円

下限・上限は、保存水450本、主食900食、便袋付き非常用トイレ1,500回分、アルミ保温シート100枚について、各品目の調査価格の端を組み合わせた編集部試算です。実際にその組み合わせを同時購入できることを示すものではなく、市場平均や法人向け見積相場でもありません。その比較は次章で行います。

上記には、衛生用品・照明・情報機器・ヘルメット・救急用品・保管什器・送料を含んでいません。これらを加えると、1人あたりの金額はさらに上積みされます。稟議書では「基本構成」と「追加分」を分けて記載すると、査定の論点が明確になります。

まとめ買いと個別購入、配送・分納・保管

セット商品と品目別購入の使い分け

向いている場面 注意すること
セット商品 初めて備蓄を整える/個人配布型として1人ずつ渡す/選定の工数を抑えたい 含まれる数量が自社の必要量と合うとは限らない。既存備蓄と重複する品目が生まれやすい
品目別購入 必要数量が算定済み/既存備蓄の不足分だけ補う/保存年数を揃えたい 品目ごとに発注先・納期・送料が分かれる。管理台帳の整備が前提になる

実務では、不足分を品目別に積み増すほうが無駄が出にくくなります。セット商品に含まれる水やトイレが、すでにある備蓄と重複して積み上がるのが、最も起きやすい過剰支出です。

配送・分納・保管で発生する費用

  • 送料:水は重量があり、2L×6本のケースが1箱約12kgになります。拠点数が多いほど送料の総額が効きます
  • 分納:複数拠点へ分けて納品する場合、拠点ごとに配送が発生します。可否と条件は見積時の確認事項です
  • 搬入・設置:エレベーターのない建物、地下倉庫、高層階では、搬入の条件を事前に伝える必要があります
  • 保管什器:棚や備蓄庫を新設する場合は初期費用に加算します。転倒防止の固定費用も見込みます
  • 既存在庫の処分:期限切れの入れ替え時に、廃棄費用が発生することがあります

補助金を使う場合、送料は対象外になることがあります
たとえば千代田区の助成では、送料は助成の対象外と明記されています。また、割引やクーポンが適用される場合は割引後の価格に対して助成されます。補助の対象経費と、実際に支払う総額は一致しません。

初期費用と更新費用|5〜15年で見る

備蓄品は買い切りではありません。保存年数が過ぎれば入れ替えが必要です。そして保存年数は品目ごとに違います。

保存年数の違いが総額を逆転させる

編集部のモデル試算備蓄対象人数100名・非常用トイレ1,500回分を、15年間保有する場合の比較です。単価は調査した価格帯から置いた仮定で、実売価格ではありません。

前提 仮単価 15年での購入回数 15年の累計 入れ替え作業
保存年数5年の製品 120円/回 3回 540,000円 3回
保存年数15年の製品 180円/回 1回 270,000円 1回

この仮定のもとでは、15年間の購入費用は540,000円と270,000円になります。ただし、これは同等仕様の実商品2点を比較した結果ではなく、長期保存品が常に安くなることを示しません。15年間の保有期間を購入時から数え、5年品は開始時・5年後・10年後、15年品は開始時に購入する想定です。配送・廃棄・入替作業費や将来の価格変動は含めていません。

飲料水も同様に仮定を置くと、450本を10年間保有する場合、5年保存品を1本250円で開始時と5年後に購入すれば225,000円、10年保存品を1本467円で開始時に購入すれば210,150円です。いずれも実際の見積比較ではなく説明用の計算例で、保存期限の起点・納品時の残存期限・同等容量・送料・更新作業費を揃えて検討してください。

保存年数は製品によって異なります。表示されている期限の起点(製造日か出荷日か)、保管条件、点検の結果によっても実際の使用可否は変わります。カタログの年数だけで耐用年数を一律に決めず、製品表示と点検結果で判断してください。

更新費用を年次予算に落とす

一括購入すると、数年後に更新費用がまとめて発生します。耐用年数で割った年平均額を先に出しておけば、毎年の予算として申請できます。品目別の台帳と年次平準化の方法は企業の防災備蓄ガイドで詳述しています。

発注を複数回に分けると、期限が分散して更新作業も平準化できます。ただし分割している期間は必要量を満たしていない状態になるため、不足分と充足予定を台帳に明記してください。

必要量を削らずにコストを抑える7つの方法

備蓄量そのものを削るのは、コスト削減ではなく備えの縮小です。必要量を維持したまま支出を下げる方法を挙げます。

  1. 備蓄対象人数を精査する:在籍人数で計算していた場合、最大同時在館人数へ見直すだけで数量が下がることがあります。これは削減ではなく、算定の適正化です
  2. セット内容の重複を排除する:既存備蓄と重なる品目を洗い出し、不足分だけを品目別に発注します
  3. 保管容積から逆算する:保管できない量を買うと、通路への仮置きや外部倉庫の費用が発生します。先に置き場所の寸法を測ります
  4. 保存年数の長い製品で長期総額を下げる:前章のとおり、初期単価が高くても累計で下回ることがあります
  5. 期限を分散させて発注する:更新費用の集中を避け、年次予算に収めやすくします
  6. 配送・分納の条件を見積段階で確認する:拠点数が多いほど物流費の影響が大きくなります
  7. 日常消費と兼ねられる品目を回す:トイレットペーパーなど日常でも使う品目は、通常の消耗品と同じ仕組みで回すと、防災備蓄としての更新費用を抑えられます

削ってはいけない部分があります
アレルギー対応食、生理用品、配慮が必要な方の用品は、該当者にとって代替がききません。また、安全性に関わる製品の規格や検定区分を、価格を理由に下げないでください。コストを抑える対象は、数量の算定方法・調達の条件・更新の設計であって、備えの中身ではありません。

備蓄の品目・数量と概算費用を相談する

備蓄対象人数と想定日数をお知らせいただければ、品目と数量の考え方、概算のご相談を承ります。数量が未算定の段階でも構いません。

企業・自治体・学校・施設のご担当者さまからのお問い合わせを受け付けています。

品目・数量と概算を相談する

補助金・助成金の活用と申請前チェック

防災備蓄品の購入に補助金・助成金を使えるケースがあります。ただし全国一律の制度ではありません。所在地、企業規模、対象品目、BCPの認定、申請年度、申請の順序、予算枠によって、使えるかどうかが変わります。

以下は制度の例であり、網羅的な一覧ではありません。すべて2026年10月19日に公式ページで確認した内容です。募集状況と条件は変わるため、申請前に必ず各窓口へ直接ご確認ください。

制度例1|千代田区「事業所における備蓄物資購入の費用助成」

東京都千代田区内に事業所がある企業向け2026年10月19日確認/ページ更新日 2026年4月1日

対象となる事業者
区内で事業を営む事業者(法人・個人事業主)。従業員数5人以上300人未満、法人事業税・法人都民税を完納、前回交付決定から過去3年間にこの助成金を受けていないこと。助成の対象となるのは区内に勤務する従業員数分のみです。
補助率・上限
町会に加入し恒久的に活動へ参加していて推薦がある事業所は対象経費の3分の2、それ以外の事業所は3分の1。いずれも上限10万円。
対象品目
水、食料、携帯トイレ、毛布・アルミブランケット・寝袋、ヘルメット、携帯ラジオ、懐中電灯・ランタン、蓄電池・乾電池・充電器、発電機、救急セット、おむつ、女性用衛生用品、マスク、ウェットティッシュ、使い捨てゴム手袋、体温計、簡易テントなど。水と食料は賞味期限が交付決定日から3年以上のものに限られ、品目ごとに助成数量の基準が設けられています。
申請の順序
事前承認制です。交付決定通知書が届く前に購入手続きを行った場合は助成の対象外になります。申請は下書きの提出から始まり、交付決定後に購入、その後に実績報告という流れです。
受付期間
令和8年4月1日から12月28日必着。申請状況により予算の上限に達した場合は受付を終了します。
費用面の注意
送料は助成の対象外です。割引やクーポンが適用される場合は、割引後の価格に対して助成されます。実績報告には領収書の写しが必要なため、領収書を発行できる販売店から購入する必要があります。

制度例2|戸田市「マンション及び事業所防災資器材整備補助金制度」

埼玉県戸田市内に事業所がある企業向け2026年10月19日確認/ページ更新日 2026年9月16日

対象となる事業者
市内の事業所で、事業に従事する者が5人以上。地域の自主防災組織と災害時相互応援協定等を締結していること、防災資器材の購入後に原則1年以内に防災訓練を実施すること、過去にこの補助金を受けていないことが要件です。
補助率・上限
対象となる防災資器材購入経費の2分の1、最大10万円。
対象品目
消火用資器材、救助用資器材、災害用トイレなど。過去に対象となった例として、簡易トイレ、災害用トイレ、トイレ用テント、発電機、投光機、ライト、ラジオ、カセットコンロ、給水袋、防寒シート、毛布、救急箱、担架、工具類などが挙げられています。
重要な制限
食料品・飲料水などの消耗品は対象外です。備蓄予算の大部分を占める水と主食が対象にならないため、この制度だけで備蓄全体をまかなう設計にはできません。
申請期間
申請する年度の1月31日まで。受付は先着順で、年度予算の範囲内での補助です。

制度例3|東京都「民間一時滞在施設備蓄品購入費用補助事業」

区市町村と帰宅困難者の受入協定を締結する施設向け2026年10月19日確認/令和8年度の募集中

対象となる施設
次の3つをすべて満たす施設です。(1) 施設の所在する区市町村と帰宅困難者の受入協定を締結済み、または締結予定であること。(2) 従業者用備蓄品を3日分完備していること。(3) 一時滞在施設の運営について定めた事業継続計画を策定していること。
最も重要な制限
従業者用備蓄品の購入費用は、この事業の対象外です。補助されるのは帰宅困難者向けの備蓄品であり、従業者用備蓄品は「3日分完備していること」が申請の前提条件という位置づけです。社内備蓄の予算として当て込むことはできません。
募集期間
令和8年6月9日から令和9年1月22日まで。予算が上限に達した場合は募集期間内でも締め切られます。
申請の順序
必ず発注・購入前に申請します。事前相談シートの提出から始まり、申請時には購入予定品の見積書の写し、区市町村との受入協定の写し、従業者用備蓄品の写真と保管場所図面、事業継続計画などの提出が必要です。

制度例4|宮城県「中小企業等BCP・事業継続力強化計画実践支援補助金」

令和8年度の備蓄品・少額設備枠は受付終了2026年10月19日確認/追加募集は令和8年10月9日で終了

現在の募集状況
令和8年度の備蓄品・少額設備枠の追加募集は、令和8年10月9日で受付を終了しています。令和8年5月22日から7月31日までの当初募集で設けられていた設備枠についても、追加募集は行われていません。次年度の募集の有無は本記事の執筆時点では確認できていません。
制度の内容(参考)
補助率は2分の1以内、補助額は25万円から最大50万円まで、対象は50万円以上の事業です。備蓄品の例として、非常食(水・食料等)、簡易トイレ、毛布、簡易浄水器、ダンボールベッド、土のう等の購入費が挙げられています。
要件(参考)
県内に本店または支店を有すること、事業継続力強化計画または連携事業継続力強化計画の認定を受けていること、地域協力計画を有すること、災害時の対応について社内研修または対応訓練等を実施すること、設立または開業から3年が経過していること、県税に未納がないことなどが挙げられています。
併用の制限
この補助金を活用して導入する設備については、中小企業防災・減災投資促進税制の税制優遇を活用できないとされています。補助金と税制優遇の併用可否は、制度ごとに確認が必要です。

このように、同じ「備蓄の補助制度」でも、年度内に受付が終わるものがあります。予算化の検討を始めた時点で、所在地の自治体のページで募集状況を確認してください。

関連制度|中小企業庁「事業継続力強化計画」の認定

認定制度(備蓄品の購入補助そのものではありません)2026年10月19日確認

制度の位置づけ
中小企業者等が策定した防災・減災の事前対策に関する計画を、経済産業大臣が認定する制度です。認定を受けた中小企業は、税制措置、金融支援、補助金の加点といった措置が受けられます。
備蓄費用との関係
この認定自体が備蓄消耗品の購入費を補助するものではありません。関連する中小企業防災・減災投資促進税制は、認定を受けた日から1年以内に計画に記載された対象設備を取得して事業の用に供した場合の特別償却16%の制度であり、適用期間は令和元年7月16日から令和9年3月31日までとされています。水や食料といった消耗品とは対象が異なります。
備蓄の予算化で効いてくる場面
宮城県の例のように、自治体の補助金が「事業継続力強化計画の認定」を要件にしている場合があります。補助制度の利用を見込むなら、認定の取得が先に必要になることがあります。

補助金を使った場合の実質負担

説明用の仮定以下は計算方法を示すための架空の条件です。実在する特定の制度の条件ではありません。

項目 金額 計算
補助対象経費 300,000円 対象品目の購入額
補助率 2分の1 300,000 × 1/2 = 150,000円
補助上限 100,000円 上限が優先される
補助見込額 100,000円 min(150,000, 100,000)
対象外経費(送料等) 20,000円 補助の対象にならない
自己負担の見込み 220,000円 300,000 − 100,000 + 20,000

補助率を掛けた金額と上限額のうち、低いほうが補助見込額になります。対象外の経費は、そのまま自己負担に加算されます。なお、これはあくまで見込みであり、採択、交付決定、実際の入金を保証するものではありません。

申請前チェックリスト

  • 所在地の自治体に、事業所向けの備蓄補助制度があるか確認した
  • 購入予定の品目が、その制度の対象品目に含まれているか確認した(消耗品が対象外の制度がある)
  • 事前申請・事前承認が必要かを確認した(購入後の申請が認められない制度がある)
  • 申請できる企業規模・所在地・業種の条件を満たしているか確認した
  • BCPや事業継続力強化計画の認定、協定の締結が要件になっていないか確認した
  • 賞味期限や保存年数の要件があるか確認した
  • 送料・割引の扱いを確認した
  • 品目ごとの数量基準があるか確認した
  • 見積書・領収書・納品書の様式と、発行可能な販売店かを確認した
  • 年度の予算上限と受付期限を確認した(先着順で早期終了する制度がある)
  • 実績報告の期限と、必要な写真・書類を確認した
  • 購入後の訓練実施など、事後の義務があるか確認した
  • 他の補助制度や税制優遇との併用制限を確認した
  • 過去の受給歴による制限(3年以内は申請不可など)がないか確認した

補助金の申請は、備蓄の発注より前に進めてください
紹介した制度の多くが事前承認制です。先に発注してしまうと、条件を満たしていても対象外になります。予算化の検討段階で、制度の有無と申請スケジュールを確認してください。IPIC SONAEでは、補助金の申請代行、採択の保証、補助金の診断は行っていません。制度の適用可否は、各自治体・各窓口へ直接ご確認ください。

社内稟議用の予算説明テンプレート

以下をコピーして、自社の数値に置き換えてご利用ください。査定で問われやすいのは、人数の根拠、日数の根拠、単価の出どころ、更新費用の3点です。

防災備蓄品 購入に関する稟議(記載例)

■ 件名:災害時の施設内待機に備えた備蓄品の購入について

■ 目的:発災後72時間の従業員等の施設内待機を可能にし、一斉帰宅の抑制に対応するため

■ 根拠:首都直下地震帰宅困難者等対策連絡調整会議「事業所における帰宅困難者等対策ガイドライン」(令和6年7月26日)。所在地(  )の条例・要綱:  

■ 備蓄対象人数:  名
 内訳:最大同時在館の従業員  名/同時来訪者  名/上乗せ分  名
 ※在籍従業員数(  名)との差異理由:外回り・在宅勤務・シフトにより全員が同時在館しないため

■ 想定日数:  日分(根拠:  )

■ 購入内容と金額(税込・送料別)
 飲料水  本 ×  円 =   円
 主食  食 ×  円 =   円
 非常用トイレ  回分 ×  円 =   円
 アルミ保温シート  枚 ×  円 =   円
 小計(基本構成)=   円

■ 追加分:衛生用品  円/照明・電池  円/ヘルメット  円/救急用品  円/保管什器  円

■ 送料・分納費用:  円

■ 初期費用 合計:  円(1人あたり  円)

■ 更新費用の見込み
 品目別の保存年数:飲料水  年/主食  年/非常用トイレ  年/保温シート  年
 年平均の更新費用:  円/年
 ※耐用年数で割った平準化額。次回の更新予定年月:  

■ 補助制度の利用
 制度名:  /申請先:  /補助率:  /上限:  円
 申請の順序:事前承認(要・不要)/申請予定日:  
 補助見込額:  円(採択・交付決定を保証するものではない)
 対象外経費:  円

■ 保管場所:  (寸法確認:済・未/床荷重確認:済・未)

■ 管理体制:管理担当  /点検頻度  /台帳の保管場所  

■ 単価の出どころ:見積書(  年  月  日取得)/複数社の比較( 社)

見積依頼時に揃える情報

次の項目が揃っていると、具体的な数量と金額でご案内できます。未確定の項目は「未定」のままで差し支えありません。

備蓄品 まとめ注文・見積依頼(記入例)

■ 備蓄対象人数:  名(拠点別:  拠点  名/  拠点  名)

■ 想定日数:3日分/3日分+α/7日分/未定

■ 希望品目:飲料水/主食/非常用トイレ/衛生用品/照明・電池/アルミ保温シート/毛布(別途見積)/ヘルメット/その他(  )

■ 概算数量:品目ごとに記入(未算定の場合は「要算定」)

■ 納品先:  拠点(分納の希望:有・無)

■ 希望納期:  年  月  日まで(使用予定:訓練/年度初め/その他)

■ 予算の目安:  円(未定でも可)

■ 補助制度の利用予定:有・無(制度名:  )
 必要書類:見積書/納品書/請求書/領収書/商品が特定できる資料(カタログ・商品ページ等)
 ※補助制度を利用する場合、宛名・日付・記載項目の指定があることがあります。指定がある場合はお知らせください。

■ 保管場所の制約:有・無(有の場合:  )

■ 確認したい事項:(例)数量による条件、送料、支払方法、見積書の様式

■ ご担当者:会社名/部署/お名前/ご連絡先

IPIC SONAEで対応できる品目

以下は2026年10月時点の掲載情報です。価格・仕様・セット内容は変更されることがあるため、発注前に各商品ページでご確認ください。

飲料水のように数量と保管容積が大きい品目は、拠点ごとの保管条件とあわせて検討が必要です。品目を絞って一部だけご相談いただく形でも構いません。

まとめ注文・お見積もりを依頼する

品目・数量・納品先・希望納期をお知らせください。上の記入例をそのままお送りいただいても差し支えありません。

数量・納期が未確定の段階でのご相談も承っています。補助金の申請代行・採択保証は行っておりません。

まとめ注文・見積もりを依頼する

よくある質問

Q. 企業の防災備蓄は1人あたりいくらかかりますか?

水・主食・非常用トイレ・保温シートの4品目を3日分そろえる場合、編集部のモデル試算では1人あたり約6,415〜12,480円(税込・送料別、100名モデルの単価幅)です。幅が出るのは、保存年数と製品構成によって単価が大きく変わるためです。衛生用品、照明、ヘルメット、救急用品、保管什器、送料はこの金額に含まれていません。

Q. 100人分の備蓄費用はいくらですか?

備蓄対象人数100名・3日分・基本構成4品目で、モデル試算では約782,500円です。調査した単価の端を組み合わせた参考幅は約641,500〜1,248,000円です(市場平均・法人見積相場ではありません)。この100名は在籍従業員数ではなく、最大同時在館人数に同時来訪者を加えた備蓄対象人数です。在籍人数と最大同時在館人数を照合し、適用される制度と実態に基づいて算定してください。

Q. 防災備蓄に補助金は使えますか?

使えるケースがあります。ただし全国一律の制度ではなく、所在地、企業規模、対象品目、BCPの認定、申請年度によって異なります。たとえば千代田区には事業所向けの備蓄物資購入費用助成があり、補助率は町会加入等の条件により3分の2または3分の1、上限10万円です。一方、戸田市の制度は防災資器材が対象で、食料品・飲料水などの消耗品は対象外です。所在地の自治体の防災担当部署でご確認ください。

Q. 備蓄品を買ってから補助金を申請できますか?

多くの制度が事前承認制で、購入後の申請は認められません。千代田区の助成では、交付決定通知書が届く前に購入手続きを行った場合は対象外と明記されています。東京都の民間一時滞在施設向け補助も、必ず発注・購入前に申請するよう案内されています。予算化の検討段階で、申請スケジュールを先に確認してください。

Q. 更新費用はどのくらい見ておけばよいですか?

品目ごとの保存年数で割って年平均額を試算します。ただしこれは予算を平準化する目安であり、実際の支払額ではありません。保存期限の起点や入替費用も確認してください。非常用トイレ1,500回分を15年保有する場合、保存年数5年の製品(仮に1回120円)では3回購入で540,000円、保存年数15年の製品(仮に1回180円)では1回購入で270,000円という仮定付きの試算になります。

Q. セット商品と品目別購入のどちらが安く済みますか?

必要数量が算定済みなら、品目別に不足分だけを購入するほうが無駄が出にくくなります。セット商品に含まれる水やトイレが既存備蓄と重複して積み上がるのが、最も起きやすい過剰支出です。一方、初めて備蓄を整える場合や、個人配布型として1人ずつ渡す運用なら、セット商品のほうが選定と管理の工数を抑えられます。

Q. 送料は見積に含まれていますか?

送料の扱いは発注条件によって異なるため、見積依頼時にご確認ください。水は重量があり、2L×6本のケースが1箱約12kgになります。拠点数が多い場合や分納する場合は、物流費の影響が大きくなります。また、補助制度によっては送料が対象外経費となるため、補助対象経費と実際の支払総額は一致しません。

Q. 複数拠点への分納はできますか?

分納の可否と条件は、品目・数量・納品先・時期によって異なります。お見積もりのご相談時に、拠点数と各拠点の数量をお知らせください。拠点ごとの配分の考え方は事業所が複数ある企業の防災備蓄で整理しています。

まとめ

備蓄費用は、備蓄対象人数・想定日数・品目別単価の3つで決まります。セット商品の価格から逆算するのではなく、数量を先に確定させてから単価を掛ける。この順番にすると、見積の比較も稟議の説明も通ります。

そして、初期費用だけで判断しないことです。保存年数が品目ごとに違うため、5年・10年・15年の累計で比べると、単価の高い製品のほうが総額で下回ることがあります。更新の作業負担も、回数が減るぶん軽くなります。

補助制度は、使えるなら使う価値があります。ただし多くが事前承認制で、対象品目も制度ごとに違います。消耗品が対象外の制度も、従業者用備蓄が対象外の制度もあります。発注より先に、所在地の制度を確認してください。

まずは備蓄対象人数と現状の在庫を確認し、不足分の数量を出すところから始めてください。防災を、『じぶんゴト』に。

執筆・監修|防災士 山根

アイピック株式会社所属。2024年に防災士資格を取得。IPIC SONAEで展開してきた製品の開発に携わり、商品開発で得た実務的な知見と防災士としての知識をもとに、防災情報を執筆・監修しています。

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