企業の防災備蓄品はどう収納する?保管スペースの計算・棚の選び方・レイアウト設計

企業の防災備蓄品の収納方法を解説するメイン画像。オフィスの備蓄棚に飲料水・非常食・非常用トイレ・ヘルメット・毛布を配置し、保管スペースの計算や棚の選び方、レイアウト設計を紹介

備蓄の品目と数量が決まったあと、次に止まるのが「これ、どこに置くのか」です。倉庫の面積は分かっている。棚も買える。それでも、何台買えば足りるのかが出ない。

原因は、容積だけで考えているからです。箱は直方体で、整数個しか置けません。棚には有効内寸があり、段ごとの耐荷重があり、取り出すための余裕が要ります。この記事では、必要数量を箱数に変換し、棚の収納能力から棚数と設置面積を出すまでを、実在する商品と棚の数値で順に計算します。

結論|収納設計は7つのステップで決まる

備蓄品の保管スペースを決める手順

必要な備蓄数量を箱数に変換し、箱の外寸と重量から棚の収納能力と必要棚数を計算します。そこへ棚の実寸、通路、扉の開閉、搬入と配布の動線、耐荷重、転倒・浸水対策を加えて保管室を設計します。

この記事は1拠点・1保管室の中をどう設計するかに絞っています。家庭・企業の備蓄品全体像は防災備蓄品リスト完全ガイド、品目と必要数量そのものは企業の防災備蓄ガイド、拠点をまたぐ配分は事業所が複数ある企業の防災備蓄で扱っています。

  1. 備蓄対象品目と数量を確定する対象人数と想定日数から、品目ごとの必要数量を出します。ここが未確定のまま棚を買うと、確実にやり直しになります。
  2. 商品ごとの入数・梱包外寸・梱包総重量を取得する商品ページ、メーカー資料、見積書から3点セットで集めます。1つでも欠けると、この先の計算が止まります。
  3. 必要箱数を計算する必要個数を1箱入数で割り、切り上げます。端数の扱いをここで決めます。
  4. 棚の有効内寸・段ごとの耐荷重・総耐荷重を確認する外寸ではなく有効内寸です。耐荷重は「1段あたり」か「棚全体」かを区別します。
  5. 棚数と設置面積を出す1段に何箱置けるかを、寸法・重量・運用の3方向から詰めます。
  6. 通路・出入口・搬入・配布の動線を確保する棚が入っても、人と台車が通れなければ使えません。
  7. 安全点検と台帳を連動させる棚番号と段番号を台帳に書き、現物と照合できる状態にします。

「容積÷棚容積」では棚数は出ない

最初に、やりがちな計算の誤りを潰しておきます。必要な箱の容積を合計して、棚の空間の容積で割る。この方法では棚数は決まりません。

誤解しやすい点 実際には なぜ差が出るか
箱の公称容積=必要床面積 床面積は棚の外寸と通路で決まる 箱は棚の中にあり、棚には枠と支柱がある
棚の外寸=有効内寸 有効内寸は外寸より小さい 支柱・ビーム・振れ止めの分が差し引かれる
理論上の収納数=運用できる収納数 運用数のほうが少ない 出し入れの余裕、箱の向き、奥列の取り出しやすさが効く
容積が余っていれば積める 積み重ね制限が優先される メーカーが段積み数を指定している製品がある
重いものは下段に置けば安全 偏荷重・総重量・固定方法も要る 下段に集中させると棚の重心と床への集中荷重が変わる
分散配置すれば管理は不要 台帳で所在が追えることが前提 どこに何段分あるか分からなければ、棚卸しも更新もできない

この記事の後半で、実際の商品と棚の数値を使って、容積ベースの計算と箱数ベースの計算がどれだけずれるかを示します。

ステップ1〜3|必要数量を箱数・容積・重量に変換する

必要箱数の計算式

必要箱数 = ceil(必要個数 ÷ 1箱入数)

ceil は切り上げ。0.1箱でも1箱として数えます。端数で生じた余剰は「予備」ではなく「丸めによる余り」として台帳に分けて記録します

切り上げる理由は単純で、箱は分割できないからです。そして余った分を予備と呼ばないのは、目的のある予備と混ざると、翌年の棚卸しで何が不足しているのか分からなくなるためです。

容積と重量の計算式

1箱の概算容積 = 外寸の3辺の積

合計容積 = 1箱の容積 × 箱数 / 合計重量 = 1箱の梱包総重量 × 箱数

容積は保管室の規模感を把握するための参考値です。棚数の決定には使いません

集めるべき3つの数値

棚の計算に入る前に、品目ごとに次の3点を確定させてください。1つでも欠けると先に進めません。

  • 1箱入数:1箱に何個・何回分・何食入っているか
  • 梱包外寸:縦×横×高さ。商品本体の寸法ではなく、箱の外寸です
  • 梱包総重量:箱を含んだ重量。本体重量と混同しないでください

商品ページに記載がない場合は、見積依頼時に合わせて確認します。発注してから採寸すると、棚の仕様変更が間に合いません。

実商品で計算する|非常用トイレ100名3日分

ここからは実在する商品の数値で計算します。前提は、備蓄対象人数100名・3日分。非常用トイレの必要回数は、成人の平均排泄回数を1日5回として5回 × 100名 × 3日 = 1,500回分です。

商品の仕様

項目 数値 出典
商品 非常用簡易トイレ「トイレのミカタ」120回分(品番000-54006-120) 公式商品ページ
1箱入数 120回分 公式商品ページ
梱包外寸 242 × 213 × 182 mm 公式商品ページ
梱包総重量(計算用暫定値) 3.36 kg(未確定) 当社運営ECの掲載値。公式商品ページに重量記載なし
1箱の概算容積 約9.38 L 242×213×182=9,381,372 mm³

商品仕様2026年10月19日確認。仕様は変更されることがあるため、発注前に商品ページで最新の表示をご確認ください。なお、当社がAmazonに出品している同一商品のページでは、配送事情を反映した梱包寸法・重量として別の値(24.7 × 18.5 × 18.2 cm/2.97 kg)が表示されています。両者の数値は一致しておらず、外寸の一致だけで3.36kgを確定値とは判断できません。本記事では荷重計算の暫定値として3.36kgを使用します。実際の棚・床荷重の設計や発注前には、販売元に現行ロットの梱包総重量を確認してください。

必要箱数

ceil(1,500回分 ÷ 120回分) = ceil(12.5) = 13箱

13箱=1,560回分。丸めによる余りは60回分

項目 計算 結果
必要回数 5回 × 100名 × 3日 1,500回分
必要箱数 ceil(1,500 ÷ 120) 13箱
合計重量 13箱 × 3.36 kg 43.68 kg
合計容積 13箱 × 9.38 L 約121.9 L

ここまでは、商品の数値さえあれば誰が計算しても同じ答えになります。問題は次からです。この121.9Lが、棚の何段分にあたるのか。

ステップ4|棚の収納能力を3つに分けて出す

棚の収納能力は、理論収納数・運用収納数・安全上の上限の3つに分けて出します。ひとつの数字にまとめると、どこで詰まっているのかが分からなくなります。

例に使う棚の仕様

項目 数値 確認状況
棚 中量ボルトレス棚(1800×571×H1800、5段、単体型) 販売元掲載のメーカー仕様
外寸 間口1,861 × 奥行581 × 高さ1,811 mm 公表値
有効間口 1,740 mm 公表値
均等積載量 300 kg/段 公表値
最大積載量 2,500 kg/台 公表値
棚段数 5段 公表値
棚板調整ピッチ 25 mm 公表値
有効奥行 公表されていない 要実測
段間の有効高さ 段の設定による 要実測

棚仕様2026年10月19日確認。有効奥行と段間の有効高さは公表されていないため、以下の計算では仮の数値を置いています。実際の設計では、納品後に実測した値に置き換えてください。

理論収納数|寸法だけで決まる数

箱を「242mm(間口方向)× 213mm(奥行方向)× 182mm(高さ方向)」の向きで置く場合の計算です。

方向 計算 結果 前提
間口方向 floor(1,740 ÷ 242) = floor(7.19) 7箱 公表値
奥行方向 floor(560 ÷ 213) = floor(2.63) 2列 有効奥行560mmと仮定
高さ方向 段間の有効高さ ≧ 182mm なら1段積み 1段 積み重ね可否は要確認
1段の理論収納数 7 × 2 × 1 14箱 —

説明用の仮定有効奥行560mmは、外寸奥行581mmから枠材の分を差し引いた仮の値です。実測値ではありません。

運用収納数|出し入れできる数

理論収納数のまま運用すると、奥の箱が取り出せず、期限の古いものから使えなくなります。次の3点を反映します。

  • 取り出し余裕:間口方向の両端に各20mmの余裕を取る。1,740 − 40 = 1,700mm → floor(1,700 ÷ 242) = 7箱(この条件では変わらない)
  • 奥列の扱い:奥列は手前を動かさないと取り出せません。先入れ先出しを維持するため、奥列は同一ロット・同一期限のみとします
  • 作業スペース:段の端に手を入れる余裕を残すため、1段あたり2箱分を空けます

【この計算例だけの運用条件】1段の運用収納数 = 14箱 − 2箱 = 12箱

控える2箱は公的基準・棚メーカーの指定ではなく、編集部が説明用に設定した余裕です。棚・箱の組み合わせごとに取り出し試験を行い、実際の運用収納数を決めてください

安全上の上限|重量で決まる数

確認項目 計算 結果 判定
1段の重量 14箱 × 3.36 kg 47.04 kg 300 kg/段 以内
5段満載の重量 70箱 × 3.36 kg 235.2 kg 2,500 kg/台 以内
設置面積 1.861 m × 0.581 m 約1.081 m² —
面積あたり荷重 235.2 kg ÷ 1.081 m² 約218 kg/m² 後述の確認が必要

この仮定では棚板の均等積載量が先に制約となる計算ではありません。ただし梱包重量は未確定であり、床への荷重・棚の固定・積み重ね制限を含む安全性を確認したものではありません。寸法と運用の条件も確認が必要です。品目によって、どれが先に効くかが変わります。飲料水では逆になります(第7章)。

ステップ5|必要段数・棚数・設置面積

必要段数 = ceil(必要箱数 ÷ 1段の運用収納数)

ceil(13箱 ÷ 12箱) = ceil(1.08) = 2段

5段の棚なので、非常用トイレ13箱はこの運用条件では棚1台のうち2段を占有します。残り3段には別の品目を配置できます。

容積で計算すると、どれだけずれるか

第2章で触れた誤りを、数字で確認します。

計算方法 内容 出てくる答え
容積ベース 121.9 L ÷ 1段の空間(1.74 × 0.56 × 0.30 = 約292 L) 0.42段
理論収納数ベース ceil(13箱 ÷ 14箱) 1段
運用収納数ベース ceil(13箱 ÷ 12箱) 2段

容積比は約0.42段相当ですが、これは実際の収納可能段数ではありません。この例では理論上1段、2箱分の余裕を設ける運用条件では2段となります。容積比と運用上の必要段数には約5倍の差が生じますが、一般的な倍率ではありません。品目数が増え、棚が複数台になるほど、この誤差は積み上がります。

容積の計算が無意味なわけではありません。保管室の広さの当たりをつけるには有効です。ただし、発注する棚の台数は箱数ベースで決めてください。容積で見積もって棚を発注すると、納品後に入りきらないことがあります。

設置面積に通路を足す

棚の外寸だけでは、実際に必要な床面積になりません。

実質占有面積 = 棚の外寸面積 + 前面通路(棚の間口 × 通路幅)

通路幅は、人が箱を持って通れるか、台車が入るかで決めます。両面から使う配置では、通路を2本確保します

通路幅の数値は、建物の用途、避難経路の位置、消防法令上の制約によって変わります。数値を独自に決めず、建物の管理者または防火管理者に確認してください。

保管スペースに制約がある場合のご相談

保管できる容積や段数から逆算したい場合は、当店取扱商品の梱包サイズ・1箱入数・納品条件をご確認のうえ、お見積もりをご相談いただけます。

棚の選定や倉庫の設計、現地での診断は承っておりません。商品の梱包仕様と納品条件についてのご案内になります。

飲料水は重量が先に効く

非常用トイレでは寸法が制約になりました。飲料水では、重量が先に上限へ届きます。

水の密度から、2L×6本のケースは中身だけで約12kgです。梱包材を含めた総重量と外寸は製品によって異なるため、ケースの仕様を確認してください。

確認項目 計算 結果
100名3日分の必要量 3L × 100名 × 3日 900 L
2Lケース換算 900 ÷ 2 ÷ 6(端数切り上げ) 75ケース
中身の合計重量 900 L × 約1 kg/L 約900 kg
棚板の均等積載量だけで計算した上限 floor(300 kg ÷ 約12.5 kg) 24ケース/段(収納可能数ではない)
重量条件のみを5段に当てはめた仮定 24ケース × 5段 × 約12.5 kg 約1,500 kg(安全な積載例ではない)
面積あたり荷重 1,500 kg ÷ 1.081 m² 約1,388 kg/m²

説明用の仮定1ケース約12.5kgは、中身12kgに梱包材を加えた仮の値です。実際の重量は製品の仕様でご確認ください。24ケース/段は棚板の均等積載量だけから計算した数値で、実際に収納できる数量ではありません。棚の有効間口・奥行・高さ、棚全体の耐荷重、脚部の集中荷重、床構造、転倒防止を別途確認してください。5段で約1,500kgという値も、安全な積載方法を示すものではありません。

重要なのは最後の行です。棚の耐荷重の範囲内であっても、床にかかる荷重は別の問題として残ります。

床荷重と転倒防止は「確認先」を間違えない

事務室の床は、水の満載を想定していない

公的情報建築基準法施行令第85条は、建築物の各部の積載荷重を実況に応じて計算することを定め、室の種類ごとに床の構造計算に用いる数値を表で示しています。事務室は床版・小梁の計算用として1m²あたり2,900N、倉庫業を営む倉庫については同条第3項で、実況に応じて計算した数値が1m²につき3,900N未満の場合でも3,900Nとしなければならないとされています。

1N はおよそ0.102kgfです。2,900N/m² は約296kg/m²、3,900N/m² は約398kg/m² にあたります。

説明用の条件 棚の外形面積で割った参考値 安全性の判定
非常用トイレ 5段満載 約218 kg/m² この比較だけでは判定不可
飲料水 5段満載(仮定) 約1,388 kg/m² この比較だけでは判定不可

この数値だけで床の安全を判断しないでください
施行令の数値は構造計算に用いる前提値であり、「この値まで載せてよい」という許可ではありません。棚の外形面積で割った平均値は、脚部が床に伝える局所的な集中荷重を表しません。構造計算用の積載荷重と単純比較して安全・危険を判定することはできません。実際の建物は、設計時の用途、スラブの構造、梁の位置、既存の什器の重量によって条件が異なります。棚を置く位置が梁の上か中央かでも変わります。重量物を集中して置く場合は、建物の管理者、オーナー、または構造設計の担当者に、事前に荷重条件を確認してください。水1L≒1kgという換算だけで判断してよい問題ではありません。

転倒防止と荷重の分布

  • 耐荷重の表記を確認する:「1段あたり」か「棚全体」か。均等分布荷重か集中荷重か。メーカーの表示で確認します
  • 重量物は下段へ:ただし下段に集中させると、床への集中荷重が増えます。重心を下げる目的と、床荷重を分散する目的は別です
  • 偏荷重を避ける:片側だけに重い箱を寄せると、均等積載量の前提から外れます
  • 固定方法を確認する:アンカー固定、壁面連結、転倒防止金具。アンカーの打設可否は建物の構造と賃貸条件に関わるため、建物管理者への確認が必要です
  • 落下防止:段の前面に落下防止バーやベルトを設置するか検討します。箱が棚から落ちると、通路をふさぎます

ステップ6|レイアウトと動線

塞いではいけないもの

公的情報首都直下地震帰宅困難者等対策連絡調整会議の「事業所における帰宅困難者等対策ガイドライン」は、保管されている備蓄品が避難通路を塞ぐ障害物となること、スプリンクラー設備の放水ヘッドを塞ぐこと、自動火災報知設備の感知器が設置免除されているパイプシャフトや機械室を倉庫として使用することなどにより、消防法令等の違反状態とならないようにする必要があるとしています。また、高層ビルではエレベーターが停止した場合に備え、保管場所を分散させることを考慮するよう示されています。

対象 確認すること 確認先
避難通路・避難口 棚を置いても通路幅が確保されるか 建物管理者、防火管理者
防火扉・防火シャッター 可動範囲に棚や箱がかからないか 建物管理者、防火管理者
スプリンクラー・感知器 棚の天板や積み上げた箱が散水を妨げないか 消防設備の保守業者、所轄消防署
点検口・配電盤 前面に必要な作業スペースが残るか 建物管理者、設備担当
出入口の扉 開閉方向と可動範囲に棚がかからないか 現地で実測
床荷重・アンカー 集中荷重の可否、床への固定の可否 建物管理者、オーナー、構造設計担当

数値の基準を社内で独自に決めないでください。通路幅も、積み上げ高さも、建物の条件によって答えが変わります。

保管環境

  • 浸水:地下・1階は浸水リスクを確認します。最下段に直接置かず、パレットや棚の2段目以上から使う方法があります
  • 高温・直射日光:窓際、空調の吹き出し口の近く、機械室の隣を避けます。食品と凝固剤では適温の条件が異なるため、製品表示で確認します
  • 湿気:段ボールは湿気で強度が落ちます。床に直置きせず、通気を確保します
  • 停電時のアクセス:照明が消えた状態でも、棚番号が分かるか。扉の電気錠が解錠できるか

保管場所を1か所にまとめるか、分散するか

向いている場合 必要になること
1か所に集約 保管室が確保できる。低層の建物。棚卸しの工数を抑えたい 発災時の配布担当と搬送経路を決める
フロアごとに分散 高層階がある。エレベーター停止時でも各階に届けたい 棚番号と所在を台帳で一元管理する
併用 水など重量物は低層階、軽量品は各階へ 品目ごとの配置ルールを文書化する

保管室の事前採寸チェックリスト

棚を発注する前に、現地で測ってください。カタログの数値と現場の寸法は、たいていどこかで合いません。

  • 室の内寸:間口・奥行・天井高を、柱や梁の出っ張りを含めて測った
  • 出入口の寸法:扉の有効開口幅と高さ。棚の部材が搬入できるか
  • 扉の可動範囲:内開きか外開きか。開いた扉が棚にかからないか
  • 搬入経路:エレベーターの有効寸法と積載量、廊下の幅、曲がり角
  • 天井の設備:スプリンクラーヘッド、感知器、照明の位置と高さ
  • 壁面の設備:配電盤、点検口、コンセント、スイッチの位置
  • 床の状態:段差、傾き、排水溝、床材の種類
  • 既存の什器:残すもの、撤去するものを区別した
  • 浸水・結露の痕跡:壁や床にシミや変色がないか
  • 空調・温度:夏季と冬季の室温。空調の有無
  • 照明:消灯時の明るさ。非常用照明の有無
  • 施錠:鍵の種類、保管者、担当者不在時の解錠方法
  • 建物側の制約:床荷重、アンカー打設の可否を管理者に確認した

棚割り記入例と台帳の連動

棚に番号を振り、段に番号を振り、台帳と照合できるようにします。所在が追えない備蓄は、棚卸しも期限管理もできません。

棚割りの記入例

以下は、前章までの計算を反映した記入例です。棚は5段、トイレが2段を占有し、残り3段に別の品目を置く構成です。

棚・段 品目 箱数 段の重量 期限・交換目安 担当
A-1(最上段) 軽量品(保温シート等)        
A-2 衛生用品        
A-3 非常用トイレ 120回分 12箱 40.3 kg    
A-4 非常用トイレ 120回分 1箱 3.4 kg    
A-5(最下段) 重量品(飲料水等)        

A-4に1箱だけ置く形になるのは、13箱を12箱/段で割った結果です。実務では、A-4の残りに同じ品目の予備や、取り出し頻度の低い品目を入れます。空いた段を空けたままにすると、別の品目が無秩序に置かれて棚割りが崩れます。

台帳に持たせる項目

品目 必要数量 1箱入数 箱数 梱包外寸 箱重量 保管条件 棚・段 期限 担当者
非常用トイレ120回分 1,500回分 120回分 13 242×213×182mm 3.36kg(暫定) 高温多湿・直射日光を避ける A-3/A-4    
                   
                   

※表は横にスクロールして確認できます。印刷時は用紙を横向きにすると読みやすくなります。

数値を記入する際は、出典と確認日もあわせて残してください。仕様は変更されます。次回の更新時に、同じ箱サイズで計算してよいかを判断するための情報になります。品目ごとの数量そのものの決め方は企業の防災備蓄ガイド、更新費用の予算化は企業の防災備蓄にかかる費用にまとめています。

納品時の検品・棚入れ手順と期限順の取り出し

納品当日の手順

  1. 数量と品目を発注内容と突き合わせる納品書と現物を照合します。箱数、品番、入数を確認します。
  2. 梱包外寸と重量を実測するカタログ値と実物が違うことがあります。この時点で測り、台帳に記録します。
  3. 期限を記録する箱ごとの期限または製造年月を控えます。同じ発注でもロットが分かれることがあります。
  4. 棚割りどおりに配置する棚番号・段番号を確認して入れます。空いた場所に適当に置かないでください。
  5. 箱の前面に表示を貼る品目名、入数、期限を、通路側から読める位置に表示します。
  6. 台帳を更新する棚・段・箱数・期限・担当者を記入します。配置図も更新します。
  7. 棚の状態を確認する偏荷重になっていないか、固定が緩んでいないか、落下防止が機能するかを見ます。

期限順の取り出しと更新ルール

  • 先入れ先出しを物理的に成立させる:期限の古いものを手前に置きます。奥列に新しいものを入れ、手前から使います
  • 奥列は同一期限でそろえる:奥と手前で期限が混ざると、手前を全部出さないと判断できなくなります
  • 補充時は入れ替える:新しい箱を手前に置くと、古い箱が奥で期限切れになります。補充のたびに前後を入れ替えます
  • 取り出した記録を残す:訓練や試食で使った分を台帳から減算します。減算しないと、次の棚卸しで差異が出ます
  • 点検日を決める:年2回など頻度を決め、棚割り・台帳・現物の3つを照合します

分散して保管する場合も、台帳を分けないでください。拠点・部屋・棚・段まで1つの台帳で追えるようにしておくと、担当者が変わっても所在が引き継げます。

記入式の収納算定シート

自社の品目と棚に置き換えて計算してください。空欄は実測値または仕様書の値を入れます。

品目ごとの箱数・容積・重量

品目 必要個数 1箱入数 箱数(切上げ) 梱包外寸(mm) 箱重量(kg) 合計重量(kg)
             
             
             
             

※表は横にスクロールして確認できます。印刷時は用紙を横向きにすると読みやすくなります。

棚の収納能力

項目 値 取得方法
棚の外寸(間口×奥行×高さ)   仕様書
有効間口   仕様書または実測
有効奥行   実測
段間の有効高さ   実測
段数   仕様書
均等積載量(1段)   仕様書
最大積載量(棚全体)   仕様書
間口方向の箱数=floor(有効間口÷箱の間口)   計算
奥行方向の列数=floor(有効奥行÷箱の奥行)   計算
高さ方向の段積み数   メーカーの積み重ね制限を確認
1段の理論収納数   上3項の積
控える箱数(取り出し余裕)   実際に出し入れして決定
1段の運用収納数   理論収納数-控え
1段の重量=運用収納数×箱重量   計算(均等積載量以内か確認)
必要段数=ceil(箱数÷運用収納数)   計算
必要棚数=ceil(必要段数÷段数)   計算
設置面積=棚の外寸面積×棚数   計算(通路は別途)
面積あたり荷重   建物管理者へ確認

まとめ注文・お見積もりを依頼する

品目・数量・納品先・希望納期に加えて、保管スペースの制約をお知らせいただければ、梱包サイズと1箱入数を踏まえてご案内します。

数量や納期が未確定の段階でのご相談も承っています。

よくある質問

Q. 備蓄品の保管スペースはどれくらい必要ですか?

品目の梱包外寸と棚の有効内寸から計算します。面積だけを先に決めることはできません。たとえば非常用トイレ120回分(梱包外寸242×213×182mm)を100名3日分そろえる場合、必要箱数は13箱、合計容積は約121.9Lです。これを有効間口1,740mmの棚に収めると、運用上は2段を占有します。品目ごとに同じ計算を行い、合計した段数から棚数を出してください。

Q. 容積で計算してはいけないのはなぜですか?

箱は直方体で、整数個しか置けないためです。上の例では容積比が約0.42段相当、寸法だけで計算した理論収納数は1段、編集部が設定した2箱分の余裕を取ると運用上は2段です。約5倍の差は今回の仮定に限定されます。容積は保管室の広さの当たりをつけるには使えますが、発注する棚の台数は箱数ベースで決めてください。

Q. 棚の収納率は8割くらいで見ておけばよいですか?

一律の収納率で計算することはおすすめしません。箱の寸法と棚の有効内寸の組み合わせによって、入る数が整数で変わるためです。上の例では、間口方向に7箱(1,740÷242=7.19)置けますが、箱の間口が250mmなら6箱(1,740÷250=6.96)になります。わずか8mmの違いで1列減ります。実際の寸法で計算してください。

Q. 水を床に積んでも大丈夫ですか?

建物の条件によります。建築基準法施行令第85条は、事務室の床の構造計算に用いる積載荷重を1m²あたり2,900N(約296kg/m²)としています。2Lケースを約12.5kgと仮定し棚板の均等積載量だけで計算すると、棚1台で約1,500kg、棚の外形面積で割った参考値は約1,388kg/m²です。しかし、これは寸法や棚全体の条件を満たす収納例でも、安全な床荷重を示す数値でもありません。施行令の数値は構造計算用の前提値であり、棚脚部の局所荷重と直接比較して安全性を判定できません。重量物を集中して置く場合は、建物の管理者や構造設計の担当者に事前に確認してください。

Q. 棚の耐荷重は何を見ればよいですか?

「1段あたりの均等積載量」と「棚全体の最大積載量」の両方を確認します。表記が均等分布荷重を前提としている場合、重い箱を片側に寄せると前提から外れます。メーカーの仕様表示を確認し、偏荷重を避けて配置してください。

Q. 備蓄品を箱のまま積み上げてもよいですか?

製品の積み重ね制限を確認してください。段ボールには積み重ね可能な段数が指定されていることがあり、超えると下の箱が変形します。また、湿気で段ボールの強度は落ちます。床に直置きせず、通気を確保してください。

Q. 通路幅は何cm確保すればよいですか?

数値を社内で独自に決めないでください。建物の用途、避難経路の位置、消防法令上の制約によって条件が変わります。備蓄品が避難通路を塞ぐ障害物となったり、スプリンクラー設備の放水ヘッドを塞いだりして消防法令等の違反状態とならないよう、配置を決める段階で建物の管理者や防火管理者に確認してください。

Q. 保管場所を分散すると管理が難しくなりませんか?

台帳で所在が追えれば管理できます。拠点・部屋・棚番号・段番号まで1つの台帳に記録し、配置図とあわせて保管してください。高層ビルではエレベーターが停止した場合に備えて保管場所を分散させることが検討項目として挙げられています。分散を避けるのではなく、台帳を整えるほうが実務に合います。拠点をまたぐ配分は事業所が複数ある企業の防災備蓄をご覧ください。

まとめ

保管スペースの設計は、必要数量を箱数に変換するところから始まります。箱の外寸と梱包総重量、1箱入数。この3つがそろって初めて、棚の計算に入れます。

棚の収納能力は、理論・運用・安全上限の3つに分けて出してください。寸法だけで決まる数、出し入れを考慮した数、耐荷重で頭打ちになる数。品目によって、どれが先に効くかが変わります。非常用トイレは寸法、飲料水は重量でした。

そして、床荷重とアンカー固定、通路幅と防火設備は、社内で数値を決める領域ではありません。建物の管理者、防火管理者、構造設計の担当者に確認してください。棚の耐荷重に収まっていることと、建物が許容することは別の問題です。

まずは保管予定の部屋を実測し、置きたい品目の梱包外寸と入数を集めるところから始めてください。防災を、『じぶんゴト』に。

執筆・監修|防災士 山根

アイピック株式会社所属。2024年に防災士資格を取得。IPIC SONAEで展開してきた製品の開発に携わり、商品開発で得た実務的な知見と防災士としての知識をもとに、防災情報を執筆・監修しています。

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