非常用トイレの種類は4つ|凝固剤式・携帯・組み立て式の違いを比較

凝固剤式・簡易トイレ・携帯トイレの違いを用途別に比較した非常用トイレの種類比較イメージ

「非常用トイレ」と検索すると、凝固剤式、携帯トイレ、簡易トイレ、組み立て式、ポータブルトイレ……と、似たような言葉が並びます。どれも同じように見えて、実は使う場所も、備えるべき数も、向いている人も違います

この記事では、非常用トイレを大きく4種類に整理し、それぞれの仕組み・メリット・デメリット・向いている用途を、比較表を使いながら解説します。読み終えたときに「わが家の場合はこれを、この数だけ」と判断できる状態を目指しました。

結論:家庭備蓄の主役は「凝固剤式」、用途で使い分ける

先に結論からお伝えします。ご家庭の防災備蓄として最初に揃えるべきなのは、自宅の便器にそのまま取り付けて使える「凝固剤式」です。そのうえで、車や外出先には携帯しやすいタイプを、便器が使えない状況に備えて組み立て式を足していく——という順番が現実的です。

この記事の要点は次の3つです。

  • 種類の違いは「どこで使うか」で決まる:便器の上か、便器のない場所か、車の中か。仕組みそのものより設置場所で選ぶと迷いません。
  • 家庭備蓄の基本は凝固剤式:普段使っている便器をそのまま活かせるため、省スペースで、コストも抑えやすく、後片付けもしやすい構成です。
  • 数の目安は「1日5回 × 人数 × 日数」:経済産業省は1人あたり35回分(7日分)の備蓄を推奨しています。

数の考え方をもっと詳しく知りたい方へ
必要回数の計算方法や家族人数別の早見表は、非常用トイレの完全ガイドで解説しています。この記事は「種類の違い」に絞ってお読みください。

非常用トイレには大きく4種類ある

市販されている災害用トイレは、大きく次の4種類に整理できます。まずは全体像を一覧で確認してみましょう。

種類 特徴 主な使用場所 おすすめ用途 メリット デメリット
凝固剤式
(便器設置タイプ)
洋式便器に排泄袋をかぶせ、凝固剤で固めて処理する 自宅・オフィスの洋式トイレ 家庭・企業の備蓄、在宅避難 省スペース/低コスト/普段の便器がそのまま使える/長期保存に対応した製品が多い 便器そのものが破損・使用不可の場合は別途便座が必要
携帯トイレ 袋と吸収材が一体になった小型タイプ。持ち運び前提 車内・屋外・移動中 車中泊、渋滞、登山、アウトドア 軽量でかさばらない/常時持ち歩ける 1回あたりの単価が高め/目隠しは別途必要/大人数・長期には不向き
組み立て式
簡易トイレ
ダンボール等で便座そのものを組み立てる 屋外・避難所・便器が使えない室内 避難所、断水+排水不可、イベント、車載 便器がなくても座って用が足せる/収納時は薄く畳める 単体では処理できず袋・凝固剤が必要/設置スペースが必要
ポータブルトイレ
(介護向け)
樹脂製などの据置型便座。バケツや袋で受ける 居室・寝室 介護、夜間の移動が難しい方 安定感がある/繰り返し使える/日常介護と兼用できる 大きく場所を取る/価格が高め/日常的な洗浄・管理が必要

「携帯トイレ」と「簡易トイレ」は呼び方が混在している

ここで多くの方がつまずくのが、言葉の定義です。公的機関の資料では、おおむね次のように整理されています。

  • 携帯トイレ……既存の洋式便器に取り付けて使う「便袋」。凝固剤や吸水シートで排泄物を処理する。
  • 簡易トイレ……便器が使えない場所に設置する、便座を組み立てるタイプ。

一方、通販サイトや商品名では、便器に取り付ける凝固剤式のセットが「簡易トイレ」と呼ばれることも珍しくありません。名称だけで判断せず、「便器に取り付けるものか/便座そのものを作るものか」を確認するのが、失敗しない選び方です。

神奈川県は、携帯トイレを「既存の洋式便器につけて使用する便袋」と説明し、吸水シートで吸収するタイプと凝固剤で固めるタイプがあるとしています。仕組みで見ると、凝固剤式と携帯トイレは近い親戚のような関係です。

凝固剤式非常用トイレとは

凝固剤式は、普段使っている洋式便器に排泄袋をかぶせ、専用の凝固剤で排泄物を固めて捨てるタイプです。家庭備蓄でもっとも広く使われています。

仕組み:水を使わず、固めて燃えるごみへ

使い方は驚くほどシンプルです。

  1. 便器に排泄袋をかぶせる(水が残っている場合は、あらかじめ袋を二重にする方法もあります)
  2. 凝固剤を入れる
  3. 便座を下ろして用を足す
  4. 袋の口を結び、処理袋にまとめて保管・廃棄する

凝固剤の主成分は高分子吸水ポリマーで、水分を吸ってゼリー状に固まります。液体のままにしないことで、漏れや臭いのリスクを下げる仕組みです。具体的な手順は非常用トイレの正しい使い方で、使用後の扱いは非常用トイレの捨て方で詳しく解説しています。

メリット

  • 設備が不要:自宅の便器をそのまま使えるため、追加の器具を買い足さずに始められる
  • 省スペース:袋と凝固剤が中心なので、押し入れやクローゼットの一角に収まる
  • 1回あたりのコストを抑えやすい:まとめ買いしやすく、家族分・長期分を現実的な予算で揃えやすい
  • 臭い・衛生の対策がしやすい:消臭・抗菌機能を備えた凝固剤や、口を縛れる処理袋がセットになった製品が多い
  • 長期保存に対応した製品が多い:入れ替えの手間が少なく、備蓄として管理しやすい

デメリットと注意点

  • 便器そのものが割れている、傾いている場合は使えない(このときは組み立て式が必要)
  • 水分が少ないと凝固しにくいことがある。大便のみの場合などは、浸る程度の水分を加える必要がある
  • 使用後の袋を一時保管する場所と、防臭対策が必要

凝固剤の取り扱いについて
凝固剤は排水口や便器の中に直接入れないでください。固まって詰まりの原因になります。また、お子さまの手の届かない場所で保管してください。

家庭備蓄に向いている理由

在宅避難では、トイレの回数は普段と変わりません。つまり必要になるのは「1〜2回の応急処置」ではなく、家族全員分を何日も回し続けられる量です。省スペースで、まとめ買いしやすく、廃棄までの流れが完結している凝固剤式は、この条件をもっとも満たしやすいタイプといえます。

マンションにお住まいの方は、排水管の点検が終わるまで水を流せないケースがあります。詳しくはマンションの断水時のトイレ対策をご覧ください。

携帯トイレとは

携帯トイレは、袋と吸収材が一体になった、持ち運びを前提とした小型タイプです。1回分ずつ個包装されているものが多く、バッグやグローブボックスに入れておけます。

使う場面

  • 車中泊:夜間や車中避難で、外のトイレまで移動できないとき
  • 高速道路・渋滞:事故や災害で長時間動けなくなったとき
  • 登山・アウトドア:トイレのない場所での携行用として
  • 子ども連れの外出:突然の「行きたい」に対応するため

メリット

  • 軽くて薄く、常時持ち歩ける
  • 1回ずつ独立しているため、必要な分だけ持ち出せる
  • 災害以外の日常シーンでも使える

デメリット

  • 1回あたりの単価は、まとめ買いできる凝固剤式より高くなりやすい
  • 目隠し(ポンチョ・車用カーテンなど)は別途必要
  • 家族分を何日も賄う用途には向かない

使い分けの考え方
携帯トイレは「持ち出し・移動用」、凝固剤式は「自宅の備蓄用」。どちらか一方ではなく、役割の違う備えとして両方を少量ずつ持っておくと、状況が変わっても対応できます。

組み立て式簡易トイレとは

組み立て式簡易トイレは、ダンボールなどで便座そのものを組み立てるタイプです。凝固剤式や携帯トイレが「袋と凝固剤」であるのに対し、こちらは「座る場所」を確保するための製品です。

便器が使えなくなるケース

意外に見落とされがちですが、災害時には便器そのものが使えなくなることがあります。

  • 地震で便器が破損した、タンクが割れた
  • 排水管が損傷し、流すこと自体が禁止されている
  • 避難所や屋外に、そもそもトイレの数が足りない
  • 車中泊で、車内にトイレスペースを作りたい
  • 屋外イベント・作業現場での臨時利用

地震直後にトイレをどう判断すべきかは、地震のあとトイレは流していい?で解説しています。

メリット

  • 便器がなくても、座った姿勢で用を足せる
  • 使わないときは薄く畳めるため、収納しやすい
  • 自宅の1階・2階、車載用と分散して備えやすい
  • 軽量で、女性や高齢の方でも移動させやすい

デメリット

  • 単体では排泄物を処理できず、排泄袋と凝固剤が別途必要
  • 設置スペースと、目隠しの工夫が必要
  • 製品ごとに耐荷重が決まっているため、事前確認が必要

IPIC SONAEの非常用組み立て式ダンボールトイレは、組立時ヨコ32×タテ31×奥行34.5cm、体重100kgまでの方にご使用いただける日本製です。外箱・内箱・底板・便座/フタというシンプルな構成で、説明を見ながら組み立てられます。

ご使用時の注意
ダンボール製のトイレは、平らな場所に設置し、ゆっくりと腰かけてください。勢いよく、または斜めに着座すると破損の恐れがあります。車内で使用する際は、必ず停車時にお使いください。

用途別おすすめ比較

ここまでの内容を、シーン別に整理します。ご自身の生活環境に近い行をご覧ください。

シーン・条件 第一候補 あわせて備えたいもの 理由
家族の家庭備蓄(基本) 凝固剤式 組み立て式1台 在宅避難では回数が多く、省スペース・低コストで量を確保できるタイプが現実的
マンション 凝固剤式 防臭袋・保管容器 排水管点検が終わるまで水を流せない可能性があり、ごみ収集再開まで自宅保管が必要になるため
戸建て 凝固剤式 組み立て式(1階・2階に分散) 階ごとに設置でき、便器破損時のバックアップにもなる
車・車中泊 携帯トイレ 組み立て式+目隠し 移動中は携行性が最優先。長時間の車中泊では座れる環境があると負担が減る
避難所・屋外 組み立て式 凝固剤・排泄袋 便器が確保できない前提。座る場所と処理材の両方が必要
介護・夜間の移動が難しい方 ポータブルトイレ 凝固剤・処理袋 安定性と繰り返し使用が重視されるため。処理材を併用すると洗浄の負担が減る
アウトドア・登山 携帯トイレ 持ち帰り用の防臭袋 携行性と、排泄物を持ち帰れることが条件になる
オフィス・法人備蓄 凝固剤式 組み立て式(複数) 既存トイレを活用しつつ、帰宅困難者の人数分を確保しやすい

家庭の備蓄なら凝固剤式が向いている理由

用途別に見てきたとおり、家庭備蓄の中心になるのは凝固剤式です。その理由を6つの観点から整理します。

1. 普段の便器がそのまま使える

災害時は、生活のすべてが「いつもと違う」状態になります。そのなかでトイレの場所と姿勢がいつも通りであることは、想像以上に負担を減らします。特に高齢の方や小さなお子さまにとって、慣れた場所で用を足せることの意味は大きいものです。

2. 省スペースで収納できる

袋と凝固剤が中心のため、家族4人・1週間分(目安140回分)でも、押し入れの一角に収まる程度に収まります。備蓄が続かない最大の理由は「置き場所がない」ことなので、この差は決定的です。

3. 必要な量を現実的なコストで揃えられる

備蓄で難しいのは、単価ではなく総量です。1人35回分を家族分となると、まとまった数が必要になります。まとめ買いしやすい形になっている凝固剤式は、この点で無理がありません。

4. 衛生面を保ちやすい

排泄物を液体のまま置かないこと、袋の口を確実に閉じられることが衛生管理の基本です。消臭・抗菌に配慮した凝固剤と、口を結べる処理袋がセットになっている製品を選ぶと、この工程が自然に整います。

5. 臭い対策を組み込みやすい

使用後の袋は、ごみ収集が再開するまで自宅で保管することになります。凝固してゼリー状にすること、二重に密閉すること、直射日光の当たらない場所に置くこと——この3点が基本です。詳しくは非常用トイレの臭い対策をご覧ください。

6. 片付けまでの流れが完結している

使用後の袋は、多くの自治体で燃えるごみとして扱われますが、最終的な区分は各自治体の規則に従ってください。処理袋がセットになっている製品なら、「固める→縛る→まとめる」までが1つの流れで完結します。

ご家庭の備蓄を、凝固剤式から始めませんか

IPIC SONAE「トイレのミカタ」は、医師・防災士監修の非常用簡易トイレです。凝固剤7g×各回数分、排泄袋(約650×500mm)、処理袋(約650×800mm)がセットになっており、60回分・120回分からお選びいただけます。

非常用簡易トイレ トイレのミカタを見る

非常用トイレを選ぶ7つのポイント

種類が決まったら、次は個別の製品を比べる段階です。次の7点を確認すると、判断がぶれません。

確認項目 見るべきポイント
保存期間 製品ごとに異なります。パッケージや商品ページの記載を確認し、購入日を書いて保管すると管理が楽になります
凝固剤の量と性能 1包あたりのグラム数を確認。水分量によって固まり方が変わるため、目安の記載があるものが安心です
防臭性能 凝固剤の消臭機能に加え、処理袋の厚み・密閉性も確認します
抗菌への配慮 使用後の袋を数日〜数週間保管することを前提に、抗菌に配慮した製品を選ぶと管理しやすくなります
袋のサイズ 便器にかぶせて余裕があるか、口を結びやすい大きさか。小さすぎる袋は扱いにくくなります
回数 「1日5回 × 人数 × 日数」で計算。経済産業省は1人あたり35回分(7日分)を推奨しています
人数・保管場所 1か所にまとめず、自宅の複数箇所・車に分散させると、どこにいても対応できます

選び方の詳細は非常用トイレの選び方、保存期間の考え方は非常用トイレの保存期間で解説しています。

備えがないと、どうなるのか
災害時の困りごととして、トイレは常に上位に挙がります。災害時に困ったことランキングや、非常用トイレを備蓄していないとどうなるかもあわせてご覧ください。また、水分や食事を控えて排泄を我慢することは体への負担につながると、専門機関からも注意が呼びかけられています(災害時にトイレを我慢するリスク)。

今日からできる備え

すべてを一度に揃える必要はありません。次の5つから始めてみてください。

  • いま家にある回数を数える:まずは現状把握から。想像より少ないことがほとんどです
  • 必要回数を計算する:1日5回 × 家族の人数 × 日数。まずは3日分、次に7日分を目標に
  • 保管場所を分散させる:自宅の1階と2階、車の中に分けておくと、どこにいても使えます
  • 家族に置き場所を伝える:本人がいないときに使えなければ、備えは機能しません
  • 一度、開けて試してみる:1回分だけでも手順を確認しておくと、いざというときに迷いません

よくある質問

Q. 携帯トイレと非常用トイレは同じものですか?

「非常用トイレ」は災害時に使うトイレ全般を指す広い言葉で、そのなかに携帯トイレ・凝固剤式・組み立て式・ポータブルトイレなどが含まれます。公的機関の資料では、携帯トイレは既存の洋式便器に取り付ける便袋タイプを指すことが一般的です。ただし商品名では呼び方が混在しているため、「便器に取り付けるものか、便座を組み立てるものか」で確認するのが確実です。

Q. 凝固剤だけを購入することはできますか?

凝固剤単体で販売されている製品もあります。ただし、排泄袋のサイズや処理袋の有無によって使い勝手が大きく変わるため、初めて備える場合は、凝固剤・排泄袋・処理袋がセットになった製品から始めるほうが確実です。買い足す際は、手持ちの袋のサイズと合うかをご確認ください。

Q. 組み立て式だけを備えておけば十分ですか?

組み立て式は「座る場所」を確保するための製品で、単体では排泄物を処理できません。必ず排泄袋と凝固剤とあわせて備えてください。逆に、自宅の便器が使える状態であれば、凝固剤式だけでも用は足せます。組み立て式は、便器が破損した場合や屋外・車内で使う場合のバックアップとして考えると位置づけが明確になります。

Q. 何回分を備蓄すればよいですか?

経済産業省は、1人あたり35回分(7日分)の備蓄を推奨しています。計算式は「1日5回 × 人数 × 日数」です。4人家族なら、3日分で60回分、7日分で140回分が目安になります。まずは3日分から始め、少しずつ7日分に近づけていく進め方でも構いません。

Q. 車にはどのタイプがおすすめですか?

持ち運びやすさを優先し、携帯トイレを常備しておくのが基本です。そのうえで、車中泊や長時間の渋滞を想定するなら、畳んで積んでおける組み立て式があると姿勢の負担が減ります。あわせて、目隠しになるポンチョやカーテン、使用後の袋を入れる防臭袋も車内に入れておくと安心です。

まとめ

非常用トイレは、名前が似ていても役割が異なります。整理すると、次のようになります。

  • 凝固剤式……家庭・オフィスの備蓄の中心。省スペースで量を確保しやすい
  • 携帯トイレ……車・外出先・アウトドア用。携行性が最大の強み
  • 組み立て式……便器が使えない状況のバックアップ。袋と凝固剤の併用が前提
  • ポータブルトイレ……介護や夜間の移動が難しい方向け

まずは、ご自宅の洋式便器で使える凝固剤式を、家族の人数分だけ。そこに、車用の携帯トイレと、便器が使えないとき用の組み立て式を1台ずつ足していく。この順番なら、無理なく備えが形になります。

防災は、災害が起きてから始めるものではありません。今日、家族で置き場所を話してみること。備えを一つ見直してみること。その小さな一歩が、もしもの安心につながります。IPIC SONAEは、防災を「じぶんゴト」にしていく日々の備えを応援しています。

参考情報

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