法人は非常用トイレを何回分備蓄すべき?人数別・日数別の目安を解説
大きな地震や豪雨で断水・停電・配管損傷が起きると、オフィスや工場の水洗トイレは突然使えなくなることがあります。さらに交通機関が止まれば、従業員が帰宅できず、社内で数日間待機する状況も想定しなければなりません。
法人の非常用トイレは、単に箱数を決めるのではなく、「対象人数 × 1日あたりの使用回数 × 備蓄日数」で必要量を算出することが基本です。この記事では、10人から300人までの早見表、業種・勤務形態による調整方法、保管と運用の注意点まで具体的に解説します。
結論:法人の備蓄数は「人数×1日5回×日数」で計算する
法人が用意する非常用トイレの回数は、次の計算式で求められます。
必要回数 = 備蓄対象人数 × 1日5回 × 備蓄日数
経済産業省は、成人の平均的な排泄回数を1日5回とし、災害時用トイレを1人あたり35回分、つまり7日分備蓄する目安を示しています。企業の備蓄日数は、所在地の制度・自治体のガイドライン・BCP・事業所の役割を確認して決めます。東京都の帰宅困難者対策では、発災時に職場にいる従業者が3日間待機できる量の備蓄が示されています。一方、経済産業省は災害時用トイレについて成人1人35回分/週を案内しています。
たとえば従業員50人を対象にする場合、3日分なら750回、7日分なら1,750回です。100人なら3日分で1,500回、7日分で3,500回となります。
「出勤者数」だけで計算しないことが重要です。
災害発生時に社内へ滞在する可能性がある役員、派遣社員、パート・アルバイト、警備員、清掃員、来客なども対象人数に含めて検討します。
家庭を含む基本的な備蓄数の考え方は、非常用トイレは何回分必要かでも解説しています。
企業が非常用トイレを備えるべき理由
企業の防災備蓄では、水や食料が先に検討されがちですが、滞在者がいる限りトイレは必ず必要になります。トイレを確保できない状態は、衛生面だけでなく、従業員の安全や業務継続にも影響します。
断水していなくても水洗トイレを使えない場合がある
地震後に水道が出ていても、建物内の排水管や敷地内の下水設備が損傷している可能性があります。安全確認をせずに水を流すと、下階で汚水漏れが発生するおそれがあるため、管理会社や設備担当者による確認が取れるまで使用を止める判断が必要です。
高層ビルでは、停電によって給水ポンプが停止し、上層階だけ水が使えなくなることもあります。災害時は「水が出るか」だけでなく、安全に排水できるかまで確認しなければなりません。詳しい初動は、地震でトイレが使えないときの対処法をご確認ください。
帰宅困難者が社内に滞在する可能性がある
大規模地震で鉄道や道路が止まると、従業員を無理に帰宅させることは、道路混雑や二次災害のリスクを高めます。東京都の帰宅困難者対策では、一斉帰宅の抑制と、事業所における3日分の備蓄が重要な取り組みとして示されています。
水と食料を確保しても、トイレがなければ長時間の待機は困難です。非常用トイレは、従業員が安全な場所にとどまるための基礎的な備蓄品といえます。
排泄を我慢すると健康面の負担につながる
トイレを使いにくい環境では、水分摂取や食事を控えてしまう人がいます。特に高齢者、持病のある人、妊娠中の人などには大きな負担となる可能性があります。また、汚物処理が不十分な状態では、悪臭や害虫が発生し、職場環境の悪化にもつながります。
トイレを我慢することによるリスクは、災害時にトイレを我慢する危険性で詳しく解説しています。
備蓄対象人数はどう決める?従業員以外も確認する
必要回数を正確に計算するには、最初に「誰の分を備えるか」を決めます。従業員名簿の人数をそのまま使うだけでは、実際の滞在者数とずれる場合があります。
まず「発災時に事業所へ滞在する可能性がある人」を洗い出す
基本となるのは、災害が起きた時間帯に事業所へ滞在し得る最大人数です。以下の人を洗い出してください。
- 正社員・契約社員
- パート・アルバイト・派遣社員
- 役員・常駐する委託スタッフ
- 警備・清掃・設備管理などの常駐者
- 来客・取引先・配送スタッフ
- 工場や施設の利用者、入居者、患者、児童・生徒
在宅勤務者が多い企業でも、出社日や全社会議の日には人数が増えます。平日の平均人数ではなく、繁忙日や一斉出社日を含む最大値を基準にすると不足を防ぎやすくなります。
来客・外部利用者は事業所の役割に応じて別途検討する
来客や外部の帰宅困難者まで備蓄対象に含めるかは、事業所の立地・用途・協定・BCPによって異なります。東京都の事業所向けガイドラインでは、共助の観点から外部の帰宅困難者向けに10%程度を余分に備蓄することも「検討」とされています。全国一律の必須加算ではありません。
商業施設、学校、病院、一時滞在施設など、多数の外部利用者を受け入れる可能性がある施設では、10%の一律加算では足りません。通常の最大利用人数や自治体との協定内容をもとに、別枠で必要数を算出してください。
属性だけで一律に回数を増減しない
成人1日5回を共通の計算基準とし、性別・年齢等だけを理由に一律で増減しません。個別に普段の排泄回数や介助上の条件を把握している場合は、その実態を備蓄計画へ反映します。
【早見表】人数別・日数別の必要回数
「人数 × 1日5回 × 日数」で計算した早見表です。3日分・7日分を併記しています。採用する備蓄日数は所在地の制度、BCP、施設内待機計画等に合わせて決めてください。
| 備蓄対象人数 | 1日分 | 3日分 | 7日分 |
|---|---|---|---|
| 10人 | 50回分 | 150回分 | 350回分 |
| 20人 | 100回分 | 300回分 | 700回分 |
| 30人 | 150回分 | 450回分 | 1,050回分 |
| 50人 | 250回分 | 750回分 | 1,750回分 |
| 100人 | 500回分 | 1,500回分 | 3,500回分 |
| 200人 | 1,000回分 | 3,000回分 | 7,000回分 |
| 300人 | 1,500回分 | 4,500回分 | 10,500回分 |
10%を追加する場合の計算例
東京都の事業所向けガイドライン等を参考に、外部の帰宅困難者向けとして10%程度を追加する計画を採用する場合は、110人分として計算します。
110人 × 5回 × 3日 = 1,650回分
7日分まで用意する場合は、110人 × 5回 × 7日 = 3,850回分です。
計算結果が製品のセット回数と一致しない場合は、必要回数を下回らないように切り上げます。たとえば必要数が1,650回で120回セットを導入する場合、13箱では1,560回にしかならないため、14箱の1,680回分が必要です。
勤務形態・業種別に必要数を調整する
同じ従業員数でも、営業時間、施設の利用者、建物の特性によって必要量は変わります。計算式で出した数量を基準に、次の条件を加味してください。
| 事業所・業種 | 人数計算の考え方 | 備蓄時の注意点 |
|---|---|---|
| 一般オフィス | 最大出社人数+常駐スタッフ+来客予備 | 帰宅困難を想定し、各フロアへ分散する |
| 24時間稼働の工場・物流倉庫 | 発災時の在勤者に加え、次の交代要員も検討 | 広い敷地では棟・作業区画ごとに配置する |
| 店舗・商業施設 | 従業員+ピーク時の来店客 | バックヤードの保管スペースと利用者誘導を決める |
| 病院・介護施設 | 職員+入院患者・入居者+付き添い者 | 要配慮者向けの介助方法やポータブルトイレも検討する |
| 学校・保育施設 | 児童・生徒・園児+教職員 | 避難所指定の場合は地域住民分を別に計算する |
| マンション管理組合 | 全居住者数を基本に算出 | 各戸備蓄と共用備蓄の役割を分ける |
夜勤・交代勤務がある場合
夜勤者がいる事業所では、「全従業員数」と「同時滞在人員」のどちらを使うかを決めます。災害後に交代要員が出勤できず、現場の人が長時間滞在する可能性を考えると、最低でも最大同時滞在人員を下回らない数量が必要です。
一方で、寮や宿泊設備があり、非番者も敷地内にいる工場などでは、全従業員数に近い数量が必要になる場合があります。
複数拠点がある場合
本社で一括購入しても、災害時に他拠点へ運べるとは限りません。各拠点の滞在人員で必要数を計算し、拠点ごとに独立して数日間対応できるよう配備します。倉庫や工場では、同じ敷地内でも建物間の移動ができなくなることを想定し、棟単位で分ける方法も有効です。
必要回数を製品の箱数へ換算する方法
必要回数が決まったら、採用する製品のセット回数で割り、箱数へ換算します。端数は必ず切り上げてください。
必要箱数 = 必要回数 ÷ 1箱あたりの回数
割り切れない場合は、小数点以下を切り上げます。
| 対象人数 | 備蓄日数 | 必要回数 | 120回セットの場合 | 60回セットの場合 |
|---|---|---|---|---|
| 10人 | 3日 | 150回 | 2箱(240回) | 3箱(180回) |
| 30人 | 3日 | 450回 | 4箱(480回) | 8箱(480回) |
| 50人 | 3日 | 750回 | 7箱(840回) | 13箱(780回) |
| 100人 | 3日 | 1,500回 | 13箱(1,560回) | 25箱(1,500回) |
| 100人 | 7日 | 3,500回 | 30箱(3,600回) | 59箱(3,540回) |
大容量セットは箱数を減らしやすく、在庫台帳や棚卸しを簡素化できます。一方、小容量セットはフロアや部署へ細かく分散しやすいことが利点です。全量を同じ容量で揃える必要はなく、本社倉庫には120回セット、各フロアには60回セットという組み合わせも検討できます。
法人向け非常用トイレを選ぶ7つのポイント
法人備蓄では、価格だけでなく、長期間保管した後に確実に使えること、多人数で迷わず運用できることが重要です。
- 保存期間:入れ替え頻度と管理工数を抑えられるか
- 凝固性能:吸水量・凝固性能と確認できる試験条件
- 消臭・抗菌性:消臭・抗菌機能の表示、対象、確認できる試験情報
- セット内容:排便袋、処理袋、手袋、便座カバーなどが揃っているか
- 説明の分かりやすさ:初めて使う従業員でも手順を理解できるか
- 保管性:限られた倉庫やキャビネットへ収めやすいか
- 調達のしやすさ:必要数量の見積りや複数拠点への納品に対応できるか
回数だけでなく処理用品の内訳を確認する
「120回分」と表示されていても、凝固剤と排便袋の数だけでなく、処理袋や手袋の枚数は製品によって異なります。使用済み袋をまとめる処理袋が不足すると、臭いや衛生面の問題が起こりやすくなります。導入前にセット内容と運用方法を確認してください。
保存期間と更新サイクルを管理する
保存期間が長い製品は更新頻度を下げられる場合がありますが、期限管理が不要になるわけではありません。保存期間・期限の起点・保管条件を確認し、台帳の更新サイクルを決めてください。
非常用トイレ全般の比較ポイントは、非常用トイレの選び方、凝固剤の仕組みは非常用トイレの凝固剤とはで解説しています。
法人備蓄に「トイレのミカタ PREMIUM」
IPIC SONAEの「トイレのミカタ PREMIUM」は、医師・防災士・災害備蓄管理士の監修による非常用簡易トイレです。凝固剤、排泄袋、処理袋、便座カバー、手袋、防災ハンドブックをまとめて保管でき、120回セットと60回セットを選べます。
15年の長期保存に対応しているため、更新頻度を抑えたい企業、施設、学校、マンション管理組合などの備蓄にも適しています。必要数を算出したうえで、保管場所に合わせて容量を組み合わせると効率的です。
配備後に決めておきたい運用ルール
必要数量を購入しても、保管場所や使用方法が共有されていなければ、災害時に活用できません。導入時には、次の項目を防災マニュアルやBCPへ記載します。
保管場所と担当者を台帳化する
製品名、回数、箱数、保存期限、保管場所、管理担当者を一覧にします。複数拠点では、全社台帳と拠点別台帳を分けると、棚卸しや補充がしやすくなります。
一か所への集中・分散のどちらが適切かは、建物の災害リスク、保管条件、在庫管理、災害時のアクセス性から判断します。分散する場合は、各保管場所の数量を台帳で管理してください。詳しくは、非常用トイレのおすすめ保管場所をご確認ください。
水洗トイレの使用停止基準を決める
地震後に誰が水洗トイレの使用を止め、誰の確認で再開するかを決めておきます。掲示用の「使用禁止」表示やテープも一緒に保管すると、誤使用を防ぎやすくなります。
使用済み袋の一時保管場所を確保する
災害時はごみ収集が止まる可能性があります。非常用トイレを使う場所だけでなく、密封した処理袋を回収再開まで保管する場所も必要です。居室や執務スペースから離れ、直射日光や雨を避けられる場所を選びます。
処分方法は自治体によって異なるため、平時に所在地のルールを確認してください。一般的な考え方は、非常用トイレの処分方法で解説しています。
年1回は使用訓練を行う
防災訓練では、サンプルを使う場合は、採用製品の説明書に従って便袋の設置、凝固剤の使用、袋の閉じ方などを確認します。担当者以外の従業員も使える状態にしておくことが重要です。
備蓄数は人員変更に合わせて見直しましょう。
採用、拠点統合、フロア移転、営業時間の変更などがあった場合は、対象人数と必要回数を再計算してください。
法人の非常用トイレ備蓄に関するよくある質問
Q. 企業は非常用トイレを何日分備蓄すればよいですか?
備蓄日数は所在地の制度・自治体のガイドライン・BCP等を確認してください。東京都の帰宅困難者対策では従業者の3日間待機に必要な備蓄が示され、経済産業省は災害時用トイレについて成人1人35回分/週を案内しています。
Q. 1人あたり1日何回で計算しますか?
1人1日5回を基準にします。必要回数は「対象人数 × 5回 × 日数」で計算してください。体質や健康状態による個人差を考え、計算結果を下回らない数量を用意します。
Q. 法人に非常用トイレの備蓄義務はありますか?
全国すべての事業者に同一内容の非常用トイレ備蓄を義務付ける全国一律の制度として扱うことはできません。東京都帰宅困難者対策条例では、一斉帰宅抑制や従業者の3日分の備蓄等が事業者の取組として示されています。所在地・業種・施設の指定や協定によって条件が異なるため、自治体の最新制度を確認してください。
Q. 在宅勤務者の分も必要ですか?
通常は、災害時に事業所へ滞在する可能性のある人数を基準にします。ただし、全社会議や一斉出社日がある企業は最大出社人数で計算してください。従業員の自宅備蓄を支援する場合は、事業所備蓄とは別の施策として検討します。
Q. 来客分はどれくらい追加すればよいですか?
全国一律の10%加算基準はありません。東京都の事業所向けガイドラインでは、共助の観点から外部の帰宅困難者向けに10%程度を余分に備蓄することも検討するとしています。施設の役割や協定、BCPに応じて設定してください。
Q. 120回セットは何人分ですか?
1日5回で計算すると、1人なら24日分、4人なら6日分、8人なら3日分に相当します。法人では総必要回数を算出し、120で割って箱数を求め、端数を切り上げてください。
Q. 保管場所は倉庫一か所でよいですか?
一か所保管・分散保管のどちらが適切かは、建物リスク、保管条件、在庫管理、アクセス性で判断します。分散する場合は各場所の数量・期限を管理してください。
Q. 非常用トイレとポータブルトイレはどちらを備えるべきですか?
既存の洋式便器を安全に使用できる場合は携帯トイレ方式、独立した便座が必要な場合は簡易・ポータブルトイレ等が選択肢になります。施設利用者の身体状況と製品の使用条件から判断してください。違いはポータブルトイレと非常用トイレの違いをご覧ください。
まとめ
法人の非常用トイレは、「備蓄対象人数 × 1日5回 × 備蓄日数」で必要回数を計算します。採用する備蓄日数は、所在地の制度、BCP、施設内待機計画、事業所の役割を踏まえて決めます。
対象人数には、正社員だけでなく、派遣社員、パート・アルバイト、常駐委託スタッフ、来客なども含めます。必要数を購入した後は、保管方法、使用停止基準、使用済み袋の一時保管、定期訓練まで決めることで、実際に使える備蓄になります。
非常用トイレの基礎知識をまとめて確認したい方は、非常用トイレ完全ガイドもあわせてご覧ください。
自社に必要な回数から備蓄計画を始める
「トイレのミカタ PREMIUM」は120回・60回セットを用意。15年保存に対応し、法人のまとめ買い・数量相談・お見積りにも対応しています。
AUTHOR / SUPERVISOR
執筆・監修|防災士 山根
アイピック株式会社所属。2024年に防災士資格を取得。IPIC SONAEで展開してきた製品の開発にチームの一員として携わり、商品開発で得た実務的な知見と防災士としての知識をもとに、防災情報を執筆・監修しています。