企業の防災備蓄に非常用トイレは必要?BCP対策で準備すべき理由
大きな地震や停電で断水が起きると、オフィスの水洗トイレも突然使えなくなります。従業員が会社にとどまらざるを得ない状況では、「トイレが使えない」ことが、業務を止める最初の要因になりかねません。
この記事では、内閣府や東京都などの公的情報をもとに、企業がBCP(事業継続計画)として非常用トイレを備える理由と、人数別の備蓄目安、選び方を整理します。総務・防災のご担当者が、今日から検討に入れる形にまとめました。
企業の防災備蓄で非常用トイレが重要視される理由
結論から言えば、断水するとオフィスの水洗トイレが使えなくなり、代替手段がないまま業務が止まってしまうためです。飲料水や食料と並ぶ、優先度の高い備蓄品といえます。
災害では水道も下水も止まる
地震では、断水や停電に加え、下水管の損傷でトイレが流せなくなることがあります。ビルの受水槽やポンプは停電で動かなくなるため、高層階ほど影響を受けやすくなります。
従業員はすぐに帰宅できない可能性がある
東京都の首都直下地震等による被害想定では、都内で最大約453万人の帰宅困難者が発生するとされています。公共交通機関が止まれば、従業員は会社にとどまることになります。
トイレ問題は業務継続を直接妨げる
トイレを我慢するために水分を控えると、体調不良につながることがあります。離席が増え、衛生環境も悪化し、結果として重要業務の継続が難しくなります。
公的な考え方
東京都は帰宅困難者対策条例で、発災後おおむね3日間は従業員の一斉帰宅を抑制し、施設内で待機させるよう事業者に求めています。その待機を支えるための備蓄に、トイレ対策も含まれます。
BCP対策で非常用トイレが必要な理由
BCPの目的は「災害時も重要業務を止めない・早く復旧する」ことです。人が働き続けられる環境の確保はその土台であり、トイレはその中核に位置づけられます。
そもそもBCPとは
BCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)とは、災害や事故が起きても事業を継続・早期復旧するための計画です。人員・拠点・ライフラインの確保が主要な柱になります。
トイレが使えないことで生じるリスク
オフィスのトイレが使えないと、次のような連鎖的なリスクが発生します。
- 業務停止:社員が働ける環境そのものが失われる
- 衛生環境の悪化:排泄物の滞留による悪臭や不衛生な状態
- 健康被害:水分・トイレの我慢による体調不良
- 離席・無断帰宅:環境悪化による人員の離脱
- 信頼の低下:従業員満足度や企業イメージへの影響
| 観点 | 備えることで得られる効果 |
|---|---|
| 衛生管理 | 排泄物を適切に処理し、衛生環境の悪化を防ぎやすくする |
| 業務継続 | 社員が施設内で働き続けられる環境を保つ |
| BCP | ライフライン停止による事業停止を防ぐ |
| 安心感 | 従業員の安心・満足度の維持につながる |
企業では何回分備蓄すればよい?
結論として、目安は「1人1日あたり約5回 × 人数 × 日数」です。採用する備蓄日数は、所在地の制度、BCP、施設内待機計画、事業所の役割に合わせて決めます。
計算式
必要回数 = 1日5回 × 従業員数 × 日数
(3日分=1人15回、7日分=1人35回が目安)
人数別に整理すると、必要な回数は次のようになります。備蓄の全体像をつかむ目安としてご活用ください。
| 従業員数 | 3日分の目安 | 7日分の目安 |
|---|---|---|
| 10人 | 150回分 | 350回分 |
| 30人 | 450回分 | 1,050回分 |
| 50人 | 750回分 | 1,750回分 |
| 100人 | 1,500回分 | 3,500回分 |
| 300人 | 4,500回分 | 10,500回分 |
備蓄数を決めるときの注意
全員が24時間滞在する前提ではありませんが、BCPでは安全側に立ち、1日5回で計算するのが基本です。来客・外部の帰宅困難者分を含めるかは、施設の役割・協定・BCPに応じて設定してください。東京都のガイドラインでは、共助の観点から外部の帰宅困難者向けに10%程度を余分に備蓄することも検討するとしています。
東京都では従業者の3日分の備蓄等が事業者の取組として示されています。一方、経済産業省は災害時用トイレについて成人1人35回分/週を案内しています。全国一律に「3日が最低、7日がおすすめ」とするのではなく、所在地とBCPの条件を確認してください。より詳しい考え方は「非常用トイレは何回分必要?」で解説しています。実際に何に困るのかは「災害時に困ったことランキング」もあわせてご覧ください。
企業向け非常用トイレの選び方
個人用と違い、企業では「大量・長期・省スペース」で運用できるかが重要になります。次の観点で選ぶと失敗しにくくなります。
- 長期保存できるか:入れ替えの手間とコストを抑えられる(15年保存など)
- 凝固性能:吸水量・凝固性能と確認できる試験条件を見る
- 消臭・抗菌:機能表示の対象と確認できる試験情報を見る
- 大量備蓄・省スペース:保管場所を圧迫しないか
- 品質・製造元:日本製など品質が確認できるか
- 第三者の監修:医師・防災士などの監修があると判断材料になる
選定の基本は「非常用トイレの選び方」、臭い対策は「非常用トイレの臭い対策」で詳しく整理しています。全体像は「非常用トイレ完全ガイド」もご参照ください。
今日からできる備え
- 在席人数を確認する:ピーク時に施設内にいる人数を把握する
- 必要回数を計算する:1日5回 × 人数 × 3〜7日で試算する
- 保管場所を決める:建物リスク・保管条件・在庫管理・アクセス性から配置を決める
- 担当と手順を共有する:使い方・処理方法を社内で周知する
法人備蓄で確認する「トイレのミカタ」の仕様
IPIC SONAEの非常用簡易トイレ「トイレのミカタ」についても、必要回数・セット内容・保存条件・運用方法という同じ基準で確認します。
- 医師・防災士監修で、消臭・抗菌に配慮した設計
- 15年保存に対応し、入れ替えの手間を抑えやすい
- 凝固剤・排泄袋・処理袋をセット
- 使用後は製品の説明書と所在地の回収ルールに従って管理
- 60回分・120回分から選べ、人数に応じて数量を調整しやすい
- コンパクトな箱サイズで、省スペースに備蓄できる日本メーカー製
よくある質問
Q. 企業にも非常用トイレは必要ですか?
必要性は高いといえます。断水すると水洗トイレが使えず、従業員が施設内にとどまる際の衛生と業務継続に直結するためです。飲料水や食料と同じ優先度で考えることをおすすめします。
Q. 法律で義務付けられていますか?
全国すべての事業者に同一内容の非常用トイレ備蓄を義務付ける全国一律の制度として扱うことはできません。東京都帰宅困難者対策条例では、従業者の3日分の備蓄等が事業者の取組として示されています。所在地・施設の条件に応じて最新制度を確認してください。
Q. BCPではどの程度備蓄しますか?
経済産業省は成人1日5回・1人35回分/週を案内しています。採用する備蓄日数と外部利用者分の扱いは、所在地の制度・BCP・施設の役割に応じて決めてください。
Q. 社員全員分が必要ですか?
施設内待機を想定する場合は、ピーク時の在席人数分を基本に、来客用の予備を加えて考えます。まずは在席人数の把握から始めるとスムーズです。
Q. 保管場所はどこがよいですか?
集中・分散のどちらが適切かは、建物リスク、保管条件、在庫管理、災害時のアクセス性で判断します。分散する場合は各場所の数量・期限を台帳で管理してください。
まとめ
企業の防災において、トイレ対策は業務継続を左右する重要な備えです。断水時に代替手段がなければ、社員が働ける環境そのものが失われてしまいます。
BCPの観点でも、非常用トイレは飲料水・食料と並ぶ基本の備蓄品です。成人1日5回を計算基準に、所在地の制度・BCP・施設内待機計画に応じた備蓄日数で必要回数を算出しましょう。
その小さな一歩が、いざというときの事業継続と、従業員の安心につながります。IPIC SONAEは、IPIC SONAEは「防災を、『じぶんゴト』に。」を掲げ、企業の防災備蓄に役立つ情報を発信しています。
AUTHOR / SUPERVISOR
執筆・監修|防災士 山根
アイピック株式会社所属。2024年に防災士資格を取得。IPIC SONAEで展開してきた製品の開発にチームの一員として携わり、商品開発で得た実務的な知見と防災士としての知識をもとに、防災情報を執筆・監修しています。