防災リュックにモバイルバッテリーは必要?容量・充電方法の選び方
災害が起きたとき、家族の安否を確かめたり、避難情報を調べたりする手段として、スマートフォンを思い浮かべる方は多いはずです。一方で、停電が続けば充電はできません。「防災リュックにモバイルバッテリーは必要?」「何mAhあれば足りる?」「乾電池式と充電式、どちらがいい?」と迷うのは自然なことです。
この記事では、「おすすめは○mAh」という一つの答えではなく、スマホで何を続けたいかから逆算して、容量・電源の方式・ケーブル・点検までを自分で決められるように整理します。公的機関の情報で確認できることと、IPIC SONAE編集部としての提案は分けて示します。
この記事の結論
- 災害時のスマホは連絡・安否確認・情報収集などに使うため、電源の確保を考えておきたい備えの一つです。ただし、スマホだけを唯一の情報手段にしないことも大切です
- 乾電池式にも充電式にも、それぞれ防災上の役割があります。どちらが正解かではなく、用途に合わせて選び、組み合わせる考え方をおすすめします
- 容量は「mAhの数字」だけでなく、何に使うか、何日くらい、誰と使うか、重さ、使い切った後にどう電源を補うかから判断します
- スマホを充電できる状態には、本体+電源+ケーブル+動作確認の4つがそろっている必要があります
- 停電が長引くと、1台の容量には限りがあります。平時の点検とあわせて、複数の手段を考えておきます
防災リュックにモバイルバッテリーは必要?
スマホを連絡や情報収集に使う方にとっては、電源の確保は考えておきたい備えです。停電した状態では、ふだんのようにコンセントから充電できるとは限りません。
総務省は、電話がつながりにくいときに安否を伝える手段として、災害用伝言サービスを案内しています。また、災害時には通信事業者などが公衆無線LANを無料で開放する「00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)」の取組があり、総務省はこれを安否確認や情報収集の手段として重要なものと位置づけています。一方で、通信の暗号化などのセキュリティ対策がとられていないため、情報の入手などの利用にとどめるよう注意を呼びかけています。
こうした手段を使うにも、スマホの電池が残っていることが前提になります。ただし、スマホは電池切れ、故障、紛失、通信障害で使えなくなることがあります。ラジオや紙に控えた連絡先など、スマホ以外の手段とあわせて備えておくことで、1つが使えなくなっても情報が途切れにくくなります。
まず「スマホで続けたいこと」を棚卸しする
必要な電源の量は、スマホで何をするかによって変わります。モバイルバッテリーを選ぶ前に、災害時にスマホで続けたいことを書き出し、優先順位をつけておきましょう。
棚卸しをすると、「スマホでなくてもできること」が見えてきます。ライトは懐中電灯に、支払いは現金に任せれば、スマホの電池は連絡や情報収集のために残せます。これは、必要なモバイルバッテリーの量を考えるうえでも大切な視点です。現金の備え方は防災リュックに現金はいくら必要?で解説しています。
書き出したら、次の順で考えます。
「充電できる状態」は4点がそろって初めて成り立つ
モバイルバッテリーをリュックに入れただけでは、スマホを充電できるとは限りません。実際に充電するには、次の4つがそろっている必要があります。
本体
モバイルバッテリーや充電器
電源
本体に蓄えた電気、または交換できる乾電池
ケーブル
自分のスマホに対応するもの
動作確認
平時に実際に給電できるか確かめる
どれか1つが欠けると、いざというときに充電できません。充電式なら本体の残量、乾電池式なら電池の状態、どちらの場合もケーブルの有無と、実際に自分のスマホへ給電できるかどうか。この4点を、点検のたびに確かめてください。
IPIC SONAEの「防災リュック 1人用47点セット」に入っている乾電池式モバイルバッテリーは、使用する乾電池がセットに含まれています。一方で、USBケーブルはセットに同梱していません。スマホは人によって機種が異なるため、セットを用意した後に、ご自身のスマホに合うケーブルを確認して加えることで、この4点がそろいます。
乾電池式と充電式|勝ち負けではなく役割で比べる
乾電池式と充電式(リチウムイオン電池などを内蔵し、繰り返し充電して使うタイプ)には、それぞれ特徴があります。どちらかが防災の正解というわけではありません。
乾電池式
向く場面
- 対応する乾電池を入れて使う方式のため、本体を充電した状態で保っておく管理とは別の備え方ができる
- 対応する乾電池を備蓄しておき、交換して使える
確認しておきたいこと
- 対応する電池の種類と本数
- 電池の使用推奨期限や液漏れ
- 対応ケーブルと、自分のスマホへの給電
充電式
向く場面
- 大容量や高出力の製品など、選択肢が幅広い
- 平時から日常的に使いながら備えられる
確認しておきたいこと
- 残量(使わなくても減っていくことがある)
- 高温を避けた保管と、膨張・発熱などの異常
- 使い切った後にどう充電するか
観点ごとに並べると、次のようになります。
用途や管理方法が異なる複数の電源手段を組み合わせる方法もあります。たとえば乾電池式と充電式を併用する方法も一例ですが、どの組み合わせが合うかは、使う機器や家族の人数、持ち運べる重さ、停電時の電源確保の方法によって変わります。
容量はmAhの数字だけで決めない
モバイルバッテリーの容量は「mAh(ミリアンペアアワー)」で表示されることが多く、数字が大きいほどたくさんの電気を蓄えられます。ただし、「バッテリーの容量÷スマホの電池容量=充電できる回数」とはなりません。
表示されている容量のすべてをスマホに送れるわけではなく、電気を送る過程で失われる分があります。スマホの機種や電池の状態、充電しながら使うかどうかによっても、実際に充電できる量は変わります。メーカーが充電回数の目安を示している場合でも、あくまで目安として受け止めてください。
容量を選ぶときは、次の三つの軸で考えます。
容量を大きくすれば安心、というわけではありません。一般に容量が大きいほど本体は重くなりやすく、リュック全体の重さにも影響します。家族で共用するか、スマホ以外の手段にどこまで任せるかも含めて、自分に合う大きさを選んでください。リュック全体の重さの考え方は防災リュックの重さは何kgまで?で解説しています。
乾電池式を使うときに確認したいこと
乾電池式には、対応する乾電池を電源として使用し、電池を交換して使う製品があります。その特徴を生かすために、使用する製品の仕様と電池そのものの管理も備えの一部として考えます。
- 対応する電池の種類と本数:製品ごとに決まっています。取扱説明書で確認します
- 予備の電池:交換用の電池を、家庭備蓄も含めてどこにどれだけ置くか決めます
- 使用推奨期限:電池本体やパッケージに表示されています
- 新しい電池と古い電池、種類の違う電池を混ぜない:交換するときは全部まとめて入れ替えます
- ケーブルと給電の確認:自分のスマホに実際に給電できるか、平時に一度試しておきます
東京都消費生活総合センターは、乾電池の事故を防ぐため、新しい電池と古い電池を一緒に使わないこと、電池の種類をそろえることを呼びかけています。保管するときは購入時のパックをはがさず、プラス極とマイナス極が接触しないようにすること、クリップなどの金属と一緒にしないことも注意点として挙げています。
乾電池で何回、どれだけ充電できるかは、製品や電池の種類、スマホの機種によって違います。充電量を推測するのではなく、平時に対応するケーブルで接続し、自分のスマホへの給電が開始されることを確認しておきます。
充電式を使うときに確認したいこと
充電式のモバイルバッテリーは、日常でも使いながら備えられる便利な方式です。安全に使い続けるために、次の点を押さえておきましょう。
製品評価技術基盤機構(NITE)によると、2021年から2025年までの5年間に通知されたリチウムイオン電池搭載製品の事故は2,140件あり、製品別ではモバイルバッテリーの事故が最も多く発生しています。事故件数は春から夏にかけて気温の上昇とともに増える傾向があり、8月にピークを迎えます。NITEは、高温となる場所で使用・保管しない、強い衝撃や圧力を加えない、異常を感じた場合は使用を中止する、といった点を呼びかけています。
夏の車内や直射日光の当たる窓際など、高温になる場所に置いたままにしないことが大切です。防災リュックの置き場所を決めるときも、高温になりやすい場所は避けてください。暑い時期の防災リュックの見直し方は防災リュックの中身は季節で変える?で解説しています。
膨らみ・異臭・発熱に気づいたら使用をやめる
本体が膨らんでいる、いつもと違うにおいがする、異常に熱くなる、といった変化に気づいたら、使用や充電をやめてください。処分するときは、お住まいの自治体の分別方法に従います。
PSEマークは確認したいが、それだけで安全とは言えない
経済産業省によると、モバイルバッテリーは電気用品安全法の規制対象で、2019年2月1日以降はPSEマークのないモバイルバッテリーは販売できません。購入するときはPSEマークと事業者名の表示を確認したいところです。ただし、PSEマークがあるからといって、どんな使い方をしても安全というわけではありません。連絡先が確かなメーカーや販売店から購入する、リコールの対象になっていないか確認する、といった点もあわせて意識しておきましょう。
充電式のモバイルバッテリーは、使わずに置いておいても残量が減ることがあり、使ううちに劣化も進みます。何年で交換するかは製品や使い方で違うため、残量や状態を点検しながら判断してください。
「バッテリーはあるのにケーブルがない」を防ぐ
モバイルバッテリーとスマホをつなぐケーブルは、忘れやすいのに欠かせないものです。スマホの充電端子は機種によって異なり、家族でも同じとは限りません。
- 家族それぞれのスマホや機器が、どの端子で充電するか確認した
- モバイルバッテリー側の差込口と、スマホ側の端子の両方に合うケーブルがある
- 機種変更をしたとき、防災リュックのケーブルも見直した
- ケーブルが断線していないか、実際につないで確かめた
ふだん使っているケーブルを防災リュックと共用する場合は、避難時に持ち出せる状態かを確認します。必要に応じて、防災リュック用として別のケーブルを用意して入れておく方法もあります。
停電が長引いたとき|1台に頼り切らない
どれだけ容量の大きいモバイルバッテリーでも、蓄えられる電気には限りがあります。停電が長引けば、いずれ電源をどう補うかが問題になります。
乾電池式なら、対応する乾電池の予備をどのように備えるかがポイントになります。充電式なら、使い切った後にどこで、どう再充電するかを考えておく必要があります。太陽光で充電できる製品などもありますが、天候や設置条件によって発電量が変わるため、利用する場合も他の電源手段と役割を分けて考えます。避難先で充電できる機会があるかどうかも、状況によって異なります。
だからこそ、次のように複数の手段を組み合わせる考え方が役立ちます。
- 乾電池式と充電式を組み合わせる
- 予備の乾電池を家庭備蓄にも置いておく
- スマホ以外の情報源(ラジオなど)を用意し、スマホの電池を連絡のために残す
- 家族の機器の充電手段を、全員がひとつに頼らないようにする
スマホの電池を長くもたせる工夫
電源を確保するのと同じくらい、スマホの電池消費を抑える使い方を確認しておくことも大切です。節電機能や設定はOS・機種によって異なるため、平時に自分の端末で確認します。
- 画面の明るさを必要に応じて調整する
- 端末に用意されている省電力機能やバッテリー設定を確認する
- 情報収集をラジオなど他の手段と分担し、スマホを使う場面を整理する
通信や位置情報などは、災害情報の取得や連絡に必要になる場合があります。一律にオフにするのではなく、自分の端末の機能と必要な使い方を確認してください。
リュックへの入れ方と家族での分担
モバイルバッテリーをリュックに入れっぱなしにしてよいかは、方式によって確認することが違います。
家族で備える場合も、全員が大容量のモバイルバッテリーを1台ずつ持つ必要はありません。家族が持つ機器の数、別行動になる可能性、それぞれが背負える重さから、誰が何を持つかを決めます。補聴器など、スマホ以外に充電や電池が必要な機器を使う家族がいる場合は、その電源も含めて考えてください。高齢の家族の備えは高齢者の防災リュックに必要なもの、家族での分担は防災リュックは何個必要?で詳しく扱っています。
IPIC SONAEの防災セットの場合
IPIC SONAEの「防災リュック 1人用47点セット」には、スマホの充電手段として乾電池式モバイルバッテリーが含まれています。
防災セットは、誰にでも共通する用品をまとめた土台です。スマホの機種や使い方は一人ひとり違うため、ケーブルのように本人の機器に合わせる部分は、セットを用意した後に確認していただく必要があります。セットを受け取ったら、一度ケーブルをつないで、ご自身のスマホに給電できるかを確かめておくことをおすすめします。
セットがあれば電源の心配がなくなる、というわけではありません。停電が長引いた場合に備えて、予備の乾電池や、ほかの電源とどう組み合わせるかも考えておきましょう。
基本の防災用品をまとめて準備したい方へ
保存水や保存食、ライト、ラジオ、携帯簡易トイレなど、初期避難で使う用品を1人分まとめた「防災リュック 1人用47点セット」をご用意しています。準備の土台として、ご自身のスマホに合うケーブルなど、必要なものを加えてお使いください。
1人用47点セットを見る 防災リュック一覧を見る電源の点検チェックリスト
点検の間隔は、方式や使い方によって違います。季節の変わり目や機種変更のときなど、思い出しやすいタイミングで確認してください。防災リュック全体の点検は防災リュックの中身チェックリストを参考にしてください。
どの方式でも確認する項目
4点セット(本体・電源・ケーブル・動作確認)を中心に
- 本体がリュックに入っている
- 自分のスマホに合うケーブルが入っていて、断線していない
- 実際にスマホへ給電できることを確かめた
- 機種変更をしていないか。していれば端子を確認した
- スマホの省電力設定の場所を知っている
方式ごとに確認する項目
お使いの方式に当てはまるものだけ
- 【乾電池式】対応する電池の種類と本数を把握している
- 【乾電池式】電池の使用推奨期限が切れていない。液漏れがない
- 【乾電池式】予備の電池を、新旧を混ぜずに保管している
- 【充電式】残量が十分にある
- 【充電式】膨らみ、異臭、異常な発熱がない
- 【充電式】高温になる場所に置いていない
よくある失敗
- mAhの数字だけで選ぶ用途、重さ、使い切った後の電源まで考えないと、持て余したり足りなかったりします。
- 乾電池式は役に立たないと決めつける方式ごとに役割があります。用途に合わせて選び、組み合わせます。
- 充電式を入れっぱなしで放置するいざというときに残量がないことがあります。
- ケーブルが合わない、入っていない本体と電源があっても、ケーブルがなければ充電できません。
- 機種変更の後に確認していない端子が変わっていることがあります。
- 高温の場所に置いたままにする夏の車内などは避けてください。
- 膨らみなどの異常を見過ごす異常に気づいたら使用をやめます。
- 大容量にしすぎて重くなるリュック全体の重さとのバランスを考えます。
- スマホだけを情報源にしているラジオなど、ほかの手段も用意しておきます。
よくある質問
防災リュックにモバイルバッテリーは必要ですか?
防災用のモバイルバッテリーは何mAhあればいいですか?
10,000mAhならスマホを何回充電できますか?
乾電池式と充電式、防災にはどちらがいいですか?
乾電池式のモバイルバッテリーで注意することは?
充電式のモバイルバッテリーをリュックに入れっぱなしにしていいですか?
PSEマークがあれば安全ですか?
ケーブルも防災リュックに入れたほうがいいですか?
停電が長引いたらモバイルバッテリーだけで足りますか?
まとめ
防災リュックのモバイルバッテリーは、「何mAhを買えば完成」というものではありません。スマホで何を続けたいかを決め、スマホ以外の手段に任せられるものを切り分けたうえで、容量・重さ・使い切った後の電源をあわせて考えます。
乾電池式にも充電式にも、それぞれの役割があります。どちらを選ぶ場合も、本体・電源・ケーブル・動作確認の4点がそろって初めて、スマホを充電できる備えになります。
今日、防災リュックのモバイルバッテリーにケーブルをつないで、自分のスマホに給電できるか試してみる。その小さな一歩が、もしものときの安心につながります。防災を、『じぶんゴト』に。IPIC SONAEは、日々の見直しを通じた備えを提案しています。
AUTHOR / SUPERVISOR
執筆・監修|防災士 山根
アイピック株式会社所属。2024年に防災士資格を取得。IPIC SONAEで展開してきた製品すべての開発に携わり、商品開発で得た実務的な知見と防災士としての専門知識をもとに、防災情報を執筆・監修しています。
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