防災リュックに雨具は必要?レインコート・ポンチョ・傘の使い分け

防災リュックの雨具としてレインコート・ポンチョ・傘の使い分けを解説するイメージ

防災リュックを準備するとき、雨の日の避難まで想像している方は多くないかもしれません。けれど、台風や大雨の時期はもちろん、地震の後に雨が降ることもあります。「傘があれば十分?」「レインコートとポンチョはどちらがいい?」と迷うのは自然なことです。

この記事の答えは明確です。防災リュックには雨具を備えておくことをおすすめします。初期避難では、両手を使いやすく、移動中に体を覆えるレインウェアを基本の候補にし、傘だけに頼らないようにします。レインコート・ポンチョ・傘をどう使い分けるかを、「体を守る」「荷物を守る」「両手を空ける」「動き続けられる」の4つの視点で整理します。公的機関の情報で確認できることと、IPIC SONAE編集部の提案は分けて示します。

この記事の結論

  • 防災リュックには雨具を備えておくことをおすすめします
  • 初期避難では、両手を使いやすいレインウェア(レインコート、レインスーツ、ポンチョなど)を基本の候補にし、傘だけに頼らないようにします。傘は補助として使える場面があります
  • 雨具は「体を守る」「荷物を守る」「両手を空ける」「動き続けられる」の4つの視点で選びます。どれが一番かではなく、どの役割を満たすかで判断します
  • 雨具があるからといって、大雨や暴風の中を移動できるわけではありません。避難情報や気象情報を確かめ、天候が荒れる前に行動することが大切です
  • リュックの中身は、雨具やカバーだけに頼らず、濡らしたくないものを個別に守ることも考えます

防災リュックに雨具は必要?

雨具は、防災リュックに備えておくことをおすすめします。災害は天気を選んでくれません。雨の中で避難したり、避難先まで移動したりする場面に備えておくと、体と荷物が濡れるのを減らせます。

初期避難で基本の候補になるのは、体を覆いながら両手を使いやすいレインウェアです。傘は日常では便利ですが、片手がふさがり、風の影響も受けやすいため、避難の雨具を傘だけにしないことをおすすめします。

IPIC SONAE編集部の目安

基本の雨具初期避難時に両手を使いやすいレインウェア(レインコート、レインスーツ、ポンチョなど)を確保する
傘補助として。小雨のときや待機中など、使える場面で使う
中身の守り方着替えや紙類、電子機器など濡らしたくないものは、袋に分けて個別に守る

これは公的な基準ではなく、編集部が実務上の考え方として示す目安です。地域や避難の仕方、本人の条件に合わせて調整してください。

雨具より大切なこと|天候が荒れる前に動く

雨具について考える前に、いちばん大切なことを確認しておきます。雨具は、危険な大雨や暴風の中を移動できるようにする装備ではありません。

公的機関で確認できること

首相官邸の防災情報は、大雨や台風について、天候が荒れてからでは移動も大変になるため、早い段階から避難するよう呼びかけています。暴風や浸水で避難場所への避難がかえって危険な場合は、家の中のできるだけ安全な場所で待機したり、近くのできるだけ頑丈な建物へ移動したりすることも考えるよう案内しています。内閣府も、浸水が始まってからの屋外への移動は危険を伴うため、強風や浸水などで避難場所への移動がかえって危険な場合には、無理に移動せず、その時点でより安全な場所にとどまることも考えるよう案内しています。

雨具があることを、荒天の中を移動する理由にしない
市町村が出す避難情報や、気象庁などの気象情報を確かめ、天候が荒れる前に動くことを優先してください。雨具は、早めに避難するときや、避難先で過ごすときに体や荷物を濡らしにくくするための備えです。

この前提に立ったうえで、どんな雨具をどう備えるかを考えていきます。

なぜ雨具が必要か

雨に濡れると、困ることがいくつかあります。衣類が濡れると体が冷えやすくなり、着替えが必要になります。リュックの中身が濡れると、着替えや紙の控え、電子機器などが使えなくなることがあります。そして、雨を防ぐために片手がふさがると、手すりにつかまる、家族の手を引く、荷物を持つといった動作がしにくくなります。

雨具は、こうした困りごとを減らすための備えです。ただし、雨具を着れば体温が保たれる、体調を崩さない、と保証できるものではありません。濡れた衣類は早めに着替えるなど、ほかの備えとあわせて考えます。季節ごとの防災リュックの見直し方は、防災リュックの中身は季節で変える?で解説しています。

雨天避難の4つの視点

雨具は、次の4つの視点で考えると、何を選べばよいかが見えてきます。

A 体を守る

どこまで覆うか

頭、上半身、脚など、体のどこまでを雨から覆えるか

B 荷物を守る

リュックと中身

リュックごと覆えるか、中身を個別に守るか

C 両手を空ける

移動と補助

手すりにつかまる、家族を支える、荷物を持つ

D 動き続けられる

着心地と動きやすさ

風、蒸れ、暑さ、着脱のしやすさ、サイズ、歩きやすさ

どの雨具も、4つすべてを完璧に満たすわけではありません。自分の避難の仕方や体の条件に合わせて、どの視点を重視するかを考えます。

レインコート・レインスーツ・ポンチョ・傘の違い

雨具の種類ごとに、4つの視点で得意なことと、確かめたいことを整理しました。形や機能は製品によって大きく違うため、最終的には一つひとつの製品の説明で確かめてください。

種類
4つの視点で得意なこと
確かめたいこと
レインコート
4つの視点で得意なこと体を覆いながら両手を使いやすい(A・C)
確かめたいこと丈の長さ、フードの有無、袖口、着脱のしやすさ
レインスーツ(上下が分かれた型)
4つの視点で得意なこと脚まで覆いやすく、両手も使いやすい(A・C)
確かめたいこと上下を着る手間、重さ、かさばり
ポンチョ
4つの視点で得意なこと頭からかぶるだけの製品が多く、着脱しやすい。リュックごと覆える製品もある(A・B・C)
確かめたいことリュックを背負ったまま覆えるか、風の中で裾がばたつかないか
傘
4つの視点で得意なことさっと開いて使える。待機中や小雨のときに便利
確かめたいこと片手がふさがる。風の影響を受けやすい

レインコートとレインスーツ

レインコートは、体を覆いながら両手を使えるのが強みです。丈やフードの形は製品によって違うため、脚まで覆いたいならレインスーツのように上下が分かれた型も候補になります。ただし、上下を着るにはそのぶん手間がかかり、重さやかさも増えます。全員にレインスーツが必要というわけではありません。

ポンチョ

ポンチョは、頭からかぶるだけで着られる製品が多く、急いでいるときにも着やすいのが特徴です。リュックを背負った上から覆える製品もありますが、すべてのポンチョがリュックまで覆えるわけではありません。また、形や生地によっては、風で裾があおられることもあります。実際に背負った状態でかぶってみて確かめておきましょう。

傘

傘は、日常でも使い慣れた便利な雨具です。避難先で外に出るときや、小雨のときなど、補助として役立つ場面もあります。一方で、手に持つため片手がふさがり、風が強いと差しにくくなります。傘を使うかどうかではなく、傘だけに頼らないことがポイントです。

リュックと中身を濡らさない

雨の中では、体だけでなく、リュックとその中身も濡れやすくなります。守り方には、主に次のような方法があります。

方法
向いている場合
確かめたいこと
ポンチョでリュックごと覆う
向いている場合リュックを覆える大きさのポンチョがある
確かめたいこと背負った状態で本当に覆えるか、背中側の裾の長さ
リュックカバーを使う
向いている場合リュックの大きさに合うカバーがある
確かめたいこと背中側やすき間からは水が入ることもある。サイズが合うか
中身を個別に袋へ入れる
向いている場合どんな雨具やリュックでも組み合わせられる
確かめたいこと袋の口をしっかり閉じられるか、破れていないか

ポンチョやカバーで覆っても、すき間から水が入ることはあります。どの方法でも、着替えや紙類、電子機器など濡らしたくないものは、袋に分けて個別に守るのが基本です。詰め方の詳しい考え方は、防災リュックの詰め方で解説しています。

防水・撥水・耐水圧の見方

雨具の説明には、「防水」「撥水」「耐水圧」などの言葉が出てきます。意味を混同しないようにしましょう。

  • 防水:生地が水を通しにくいこと。ただし、縫い目やファスナーなどから水が入ることもあるため、製品の作りも確かめます
  • 撥水:生地の表面で水をはじくこと。使い続けたり洗ったりするうちに、はじく力が弱まることがあります
  • 耐水圧:生地がどのくらいの水の圧力に耐えられるかを示す数値。JIS L 1092(繊維製品の防水性試験方法)などの方法で測られます

耐水圧や、蒸れにくさを見る際の参考となる透湿度は、製品選びの参考になる数値ですが、試験方法や単位、測定条件を確認する必要があります。また、生地の測定値だけでなく、縫い目やファスナーなどを含む製品全体の仕様も確認してください。この記事では「防災には耐水圧○mm以上」といった独自の基準は設けません。異なる条件の数値を単純比較せず、4つの視点と、どんな場面で使うかから考えてください。

蒸れ・暑さ・寒さ|雨具で体温まで解決するわけではない

雨具で体を覆うと、雨は防ぎやすくなる一方で、蒸れや暑さを感じることがあります。暑い時期は、汗で中の服が濡れることもあります。反対に寒い時期は、雨具だけでは寒さを防ぎきれないこともあります。

雨具を着れば体温の管理まで解決する、というわけではありません。脱ぎ着しやすい雨具を選ぶ、中に着る服で調整する、濡れたら早めに着替える、といった工夫を組み合わせます。暑い時期・寒い時期の備え方は、季節別の記事で詳しく扱っています。

雨の中を歩くときは、靴の滑りにくさも確かめておきたい点です。ただし、浸水した道を歩く前提で装備を考えるのではなく、浸水する前に避難することを優先してください。

サイズと着脱|本人が着られるか

雨具は、実際に着られなければ役に立ちません。次の点を確かめておきましょう。

  • ふだんの服や上着の上から着られる大きさか
  • リュックごと覆う製品は、実際に背負った状態でかぶれるか
  • フードをかぶっても、前や横が見えにくくならないか
  • 急いでいるときでも、着たり脱いだりできるか
  • 子どもや高齢の家族が、自分で、または手伝いがあれば着られるか

子どもは成長とともにサイズが合わなくなります。子どもの備えは子どもの防災リュックに必要なもの、高齢の家族の備えは高齢者の防災リュックに必要なもので解説しています。

収納と点検

すぐ取り出せて、濡れたら分けられるように

雨具は、雨が降り出してから探し回らなくて済むよう、リュックの中でも取り出しやすい位置に入れておきます。使った後の濡れた雨具は、乾いた中身と分けて入れられるよう、袋を一枚用意しておくと安心です。台風や大雨の予報が出たときは、雨具がすぐ使える状態か、あらかじめ確かめておきましょう。リュック全体の置き場所は防災リュックはどこに置く?で解説しています。

一度は広げて点検する

雨具は、たたんだままでは状態が分かりません。点検のときは一度広げて、次の点を確かめます。

  • 生地の破れや穴、縫い目のほつれがないか
  • ファスナー、ボタン、留め具が使えるか
  • フードの形や大きさに問題がないか
  • 今の体のサイズに合っているか

洗い方や撥水の手入れは、製品の説明に従ってください。交換の時期は一律の年数ではなく、状態を見て判断します。リュック全体の見直し方は防災リュックはいつ見直す?で整理しています。雨具を加えて重くなったと感じたら、防災リュックの重さや容量の考え方もあわせて見直してください。

IPIC SONAEの防災セットの場合

IPIC SONAEの「防災リュック 1人用47点セット」には、公式ページの内容物一覧によると、雨天時の備えの一つとして「ケース イン レインポンチョ」が含まれています。あわせて、ポリ袋(3枚)も含まれています。

セットを用意したら、まずレインポンチョを一度広げ、本人が着られるか、体やリュックのどこまでを覆えるかを確かめてください。そのうえで、住んでいる地域の雨の多さや避難の仕方、本人の条件から、ほかの雨具を加えるかどうかを判断します。47点セットにはポリ袋3枚も含まれています。IPIC SONAE編集部では、袋のサイズや強度を確認したうえで、濡れた雨具や濡らしたくない物を分ける用途なども検討できます。防水袋としての性能を示すものではないため、用途に応じて確認してください。

IPIC SONAEからのポイント

雨具は、平時に一度広げて実際に着用し、着方・サイズ・動きやすさを確認しておきましょう。使用後は十分に乾かし、製品の説明に従って収納します。

雨の日の避難にも備えたい方へ

レインポンチョやポリ袋、ライト、ラジオ、携帯簡易トイレなど、初期避難で使う用品を1人分まとめた「防災リュック 1人用47点セット」をご用意しています。準備の土台として、地域や避難の仕方に合わせて必要なものを加えてお使いください。

1人用47点セットを見る

雨具の備えチェックリスト

選ぶとき・使い方

4つの視点で確かめること

  • 避難時に使える、両手を使いやすいレインウェアを準備している
  • 傘だけに頼っていない
  • リュックごと覆えるか、中身を個別に守るかを決めている
  • 着替えや紙類、電子機器などを袋に分けている
  • 大雨や暴風の前に避難情報・気象情報を確かめ、早めに動くことを家族で話している

着られるか・点検

平時に確かめること

  • 一度広げて、実際に着てみた
  • 服の上から、リュックを背負った状態で着られるか確かめた
  • 破れ、縫い目、ファスナーや留め具に問題がない
  • 子どものサイズが今の体に合っている
  • 濡れた雨具を入れる袋がある

よくある失敗

  1. 傘だけに頼る片手がふさがり、風の影響も受けやすくなります。
  2. ポンチョなら必ずリュックまで覆えると思う製品によって違います。背負った状態で確かめます。
  3. 雨具を一度も広げていないサイズや着方が分からず、いざというときに手間取ります。
  4. サイズが合わない服の上から着られない、動きにくいことがあります。
  5. 防水と撥水を同じ意味だと思う意味が違います。製品の説明で確かめます。
  6. 雨具があるから暴風雨でも移動できると思う天候が荒れる前に避難することが大切です。
  7. 中身を個別に守っていないカバーやポンチョのすき間から水が入ることがあります。
  8. 濡れた雨具をしまう方法を考えていない乾いた中身まで濡れてしまいます。
  9. 雨具を足した後の重さや容量を確かめていない一度背負って確かめます。
  10. 子どもの雨具のサイズを見直していない成長に合わせて確かめます。

よくある質問

防災リュックに雨具は必要ですか?
備えておくことをおすすめします。雨の中で避難したり移動したりする場面に備えると、体と荷物が濡れるのを減らせます。初期避難では、両手を使いやすいレインウェアを基本の候補にしてください。
レインコートとポンチョはどちらがいいですか?
どちらが上ということではありません。レインコートは体を覆いながら両手を使いやすく、ポンチョは着脱しやすく、リュックごと覆える製品もあります。体を守る、荷物を守る、両手を空ける、動き続けられるの4つの視点で、自分に合うものを選んでください。
避難のときに傘を使ってもいいですか?
傘を使ってはいけないわけではなく、補助として役立つ場面もあります。ただし、片手がふさがり、風の影響も受けやすいため、避難の雨具を傘だけにしないことをおすすめします。
ポンチョでリュックまで覆えますか?
リュックごと覆える製品もありますが、すべてのポンチョがそうではありません。実際にリュックを背負った状態でかぶって、背中側まで覆えるかを確かめてください。
リュックカバーがあれば中身は濡れませんか?
カバーを使っても、背中側やすき間から水が入ることがあります。着替えや紙類、電子機器など濡らしたくないものは、袋に分けて個別に守ることをおすすめします。
防水と撥水はどう違いますか?
防水は生地が水を通しにくいこと、撥水は生地の表面で水をはじくことです。撥水は使い続けたり洗ったりするうちに弱まることがあります。どちらの性能かは製品の説明で確かめてください。
耐水圧はどのくらいあればいいですか?
この記事では一律の基準は設けていません。耐水圧は生地がどのくらいの水の圧力に耐えられるかを示す数値ですが、数値だけで選ばず、どんな場面で使うか、着やすさや動きやすさも含めて考えてください。
雨具があれば台風のときでも避難できますか?
雨具は、荒天の中を移動できるようにする装備ではありません。避難情報や気象情報を確かめ、天候が荒れる前に避難することを優先してください。暴風や浸水で外への避難がかえって危険な場合は、家の中の安全な場所や近くの頑丈な建物にとどまることも考えます。
子どもの雨具はどう選べばいいですか?
今の体の大きさに合うか、服の上から着られるか、本人が自分で、または手伝いがあれば着られるかで選びます。成長とともにサイズが合わなくなるため、点検のたびに確かめてください。

まとめ

防災リュックには雨具を備えておくことをおすすめします。初期避難では、両手を使いやすいレインウェアを基本の候補にし、傘だけに頼らないようにします。雨具は、体を守る、荷物を守る、両手を空ける、動き続けられる、の4つの視点で選び、リュックの中身は濡らしたくないものを個別に守ります。

そして何より、雨具があるから荒天の中を移動できるわけではありません。避難情報や気象情報を確かめ、天候が荒れる前に動くことを優先してください。

今日、防災リュックの雨具を一度広げて、実際に着てみる。その小さな確認が、雨天時に雨具を実際に使える状態にしておく第一歩になります。防災を、『じぶんゴト』に。IPIC SONAEは、日々の見直しを通じた備えを提案しています。

AUTHOR / SUPERVISOR

執筆・監修|防災士 山根

アイピック株式会社所属。2024年に防災士資格を取得。IPIC SONAEで展開してきた製品すべての開発に携わり、商品開発で得た実務的な知見と防災士としての専門知識をもとに、防災情報を執筆・監修しています。

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