防災リュックに懐中電灯は必要?ヘッドライト・ランタンとの使い分け
停電した夜、真っ暗な家の中で、まず探すのは明かりではないでしょうか。防災リュックに入れる照明を考えるとき、「懐中電灯があればいい?」「ヘッドライトのほうが便利?」「ランタンも必要?」と迷う方は多いはずです。スマホのライトで足りるのでは、と考える方もいるかもしれません。
この記事の答えは明確です。防災リュックには、停電や夜間の避難に備えて、持ち運べる照明を用意しておくことをおすすめします。初期避難では、まず移動に使える携帯照明を確保します。懐中電灯やヘッドライトが主な候補になり、ランタンはその場を広く照らす用途で補完できます。どれが一番優秀かではなく、「進む」「両手を使う」「その場を照らす」の3つの役割で使い分ける方法を、公的機関の情報とIPIC SONAE編集部の提案を分けて整理します。
この記事の結論
- 防災リュックには、停電や夜間の避難に備えて持ち運べる照明を用意しておくことをおすすめします
- 照明には3つの役割があります。懐中電灯は進む方向を照らす、ヘッドライトは両手を空けて照らす、ランタンはその場を広く照らすのが得意です
- 初期避難では、まず暗い場所を移動するための照明を優先し、必要に応じてヘッドライトやランタンを加えます
- スマホのライトは補助として役立ちますが、照明をスマホだけに頼らないことをおすすめします
- 選ぶときは明るさの数字だけでなく、何を照らすか、両手が必要か、電源を保てるか、必要な時間使えるか、迷わず操作できるかの5つで判断します
防災リュックに懐中電灯は必要?
持ち運べる照明は、防災リュックに用意しておくことをおすすめします。初期避難では、まず移動に使える携帯照明を確保し、懐中電灯やヘッドライトを主な候補として考えます。
首相官邸の防災情報では、非常時に持ち出すものの例として懐中電灯が挙げられています。消防庁の「非常用持出品チェックシート」でも、避難用具として懐中電灯が最初に並んでいます。
ただし、照明は懐中電灯だけではありません。ヘッドライトやランタンにも、それぞれ得意な使い方があります。この記事では、懐中電灯を基本にしながら、ほかの照明とどう組み合わせるかを考えていきます。
なぜ携帯できる照明が必要か
災害で停電すると、夜は家の中も外も暗くなります。床に物が散らばっていたり、ふだん通る道の様子が変わっていたりすると、足元が見えないまま動くのは危険です。
千葉県柏市消防局は、停電時には物につまずいて転倒する場合があるとして、部屋の中を整理し、事前に懐中電灯の電池を確認するなどの準備を呼びかけています。
停電時の照明は、懐中電灯などの電気式照明を優先する
福島県郡山市消防本部は、災害時に明かり取りの目的でろうそくなどの裸火を使うのはやめ、事前に懐中電灯などを準備しておくよう呼びかけています。災害時は疲れなどから注意が行き届かないことがあり、屋内での裸火の使用は危険だとしています。
停電に備えた照明は、火を使わずに安全に明かりを確保するための備えでもあります。
照明の3つの役割|進む・両手・その場
照明は、「どんな場面で、何を照らしたいか」で3つの役割に分けると、選びやすくなります。
A 進むための光
主な候補:懐中電灯
避難する道、足元、行きたい方向や確かめたい場所を照らす
B 両手を使うための光
主な候補:ヘッドライト
荷物を持つ、家族の手を引く、何かを探すなど、手を使いながら照らす
C その場を照らす光
主な候補:ランタン
避難先や停電した部屋で、周りを広く照らす
この3つは、どれが上というものではなく、場面が違います。避難する途中ではAやBが、避難先で過ごすときにはCが役立ちます。自分の備えに、どの役割が足りていないかを考えることが、照明選びの出発点になります。
懐中電灯・ヘッドライト・ランタンの違い
3つの照明の一般的な特徴を並べると、次のようになります。製品によって違いがあるため、最終的には一つひとつの仕様を確かめてください。
横浜市泉区は、懐中電灯は部屋全体を明るくすることが難しく、食事など日常生活で必要な明かりとするのには向いていないとして、停電時の対策にはLEDランタンを備えておくことが有効だと紹介しています。
反対に、ランタンは周りを照らすのが得意な分、暗い道を進むときに足元や先を照らすのには向かない場合があります。ランタンだけで移動まで兼ねるのではなく、移動には進むための光を用意する考え方がおすすめです。
選ぶときの5つの条件
照明は、明るさのランキングではなく、使い方から逆算して選びます。次の5つの条件で考えてください。
この5つは、このあとの章で、電源、明るさ、操作、家族での分担として一つずつ見ていきます。
初期避難では何から備えるか
初期避難で最初に必要になるのは、暗い中を安全に移動するための照明です。まずは「進むための光」を一人ひとりが使える形で用意し、そのうえで、両手を使う場面が多いならヘッドライトを、避難先や在宅避難で過ごす時間を考えるならランタンを加えていきます。
IPIC SONAE編集部の目安
これは公的な基準ではなく、編集部が実務上の考え方として示す目安です。3種類すべてをそろえる必要はなく、家族の人数や避難の仕方に合わせて調整してください。
照明を増やすと、そのぶん重さと容量も増えます。リュック全体のバランスは、防災リュックの重さは何kgまで?を参考にしてください。
スマホのライトの位置づけ|補助として使う
スマホのライトは、手元をさっと照らしたいときなどに便利です。役に立たないわけではありません。ただし、防災の照明をスマホだけに頼ることはおすすめしません。
- ライトを使うと、スマホ本体の電池を消費する
- 災害時は、連絡や情報収集にもスマホを使う
- 手に持って照らすと、片手がふさがる
スマホの電池は、連絡や情報収集のために残しておきたいところです。照明は別に用意し、スマホのライトは補助として使う、という分担がおすすめです。スマホの電源の備え方は防災リュックにモバイルバッテリーは必要?、スマホ以外の情報の受け取り方は防災リュックにラジオは必要?で解説しています。
電源の考え方|平時の管理と、使い切った後
照明の電源には、乾電池、内蔵の充電池、手回し、ソーラーなどの方式があります。どの方式が一番というものではなく、それぞれ平時の管理と、使い切った後の補い方が違います。
乾電池式で確かめたいこと
乾電池は、表示された使用推奨期限と、液漏れやさびがないかを確かめます。予備の電池は、その照明が指定する種類と本数に合っているかを必ず確認してください。合わない電池を用意していても使えません。
充電式で確かめたいこと
製品評価技術基盤機構(NITE)は、充電式ライトを他製品の充電器で充電すると発火のおそれがあるとして、注意を呼びかけています。
充電式の照明は、残量があるか、本体の膨らみや異常な発熱がないかを確かめ、製品付属の充電器を使用するなど、メーカーの指定する充電方法に従ってください。照明以外の機器も含めた電源の考え方は、モバイルバッテリーの記事で扱っています。
明るさと点灯時間の見方|数字だけで決めない
明るさ(ルーメン)
照明の明るさは「ルーメン(lm)」という、光源から出る光の量を表す単位で示されることが多くあります。数字が大きいほど光の量は多くなりますが、明るければ明るいほどよい、とは限りません。足元を照らす、手元を照らす、遠くを照らす、周りを広く照らす、では必要な光が違います。複数の明るさモードがある製品では、モードごとの点灯時間をメーカー仕様で確認してください。この記事では「防災には最低○ルーメン」という基準は設けず、何を照らしたいかから考えることをおすすめします。
点灯時間
製品に書かれている点灯時間は、明るさのモードや使う電池、メーカーごとの測定の条件によって変わります。「最大○時間」という数字だけで選ぶと、実際に使いたい明るさでは思ったより短い、ということもあります。どのモードで何時間なのか、どんな条件で測った数値かを、製品の説明で確かめてください。
防水・防じん
雨の中の避難を考えるなら、防水や防じんの性能も確認したい点です。防水・防じん性能の表示と、その等級が示す使用条件を製品仕様で確認してください。
操作と置き場所|停電の後に探さなくていいように
照明は、いざというときにすぐ手に取れて、迷わず点けられることが大切です。
- 明るい部屋で操作を覚え、スイッチの位置を手探りでも分かるようにしている
- 明るさの切り替えや点滅など、モードの順番を把握している
- リュックの奥底ではなく、取り出しやすい位置に入れている
- 寝室など、停電したときにすぐ手が届く場所にも照明を置いている
停電した後に、照明を探して暗い中を歩き回らなくて済む配置を考えておきましょう。リュック全体の置き場所は防災リュックはどこに置く?、詰め方は防災リュックの詰め方で解説しています。
家族で備える場合
家族全員が同じ照明を持つ必要はありません。人数、それぞれの役割、避難の仕方から考えます。たとえば、子どもの手を引く大人はヘッドライト、子ども本人は扱いやすい小さめの懐中電灯、家族で一つランタン、という組み合わせも考えられます。
子どもや高齢の家族の照明は、重さ、持ちやすさ、スイッチの操作のしやすさを本人と一緒に確かめてください。家族での分担の考え方は防災リュックは何個必要?で整理しています。
点検のポイント
照明は、見た目では使えるか分かりません。点検のときは、実際に点けて確かめます。
- スイッチを入れて点灯するか。モードの切り替えができるか
- 乾電池式は、電池の期限と液漏れ、端子のさびがないか
- 充電式は、残量があるか。膨らみや異常な発熱がないか
- 本体やレンズに割れや破損がないか
- ヘッドライトは、バンドが伸びたり切れたりしていないか
交換の時期は一律の年数ではなく、製品の説明書や電池の表示を優先してください。リュック全体の見直し方は防災リュックはいつ見直す?で整理しています。
IPIC SONAEの防災用品の場合
IPIC SONAEの「防災リュック 1人用47点セット」には、公式ページの内容物一覧によると、照明としてLEDライトが含まれています。あわせて含まれる乾電池式モバイルバッテリーにも、ライトの機能があります。
セットを用意したら、LEDライトの使い方や電源を付属の説明で確かめ、実際に点けてみてください。そのうえで、この記事の3つの役割に照らして、両手を使う場面やその場を照らす場面に備えが必要かを考えます。追加の照明が全員に必要というわけではありませんが、家族の状況によっては、ヘッドライトやランタンを加えることも検討してください。
照明は、防災リュックの中だけでなく、寝室など停電したときにすぐ手が届く場所にも一つ置いておくと、リュックを取りに行くまでの移動にも役立ちます。
停電や夜間の避難に備えたい方へ
IPIC SONAEでは、防災ライトと、LEDライトなど初期避難の用品を1人分まとめた「防災リュック 1人用47点セット」をご用意しています。進む・両手・その場の3つの役割と、ご家族の状況に合わせてご検討ください。
防災ライトを見る照明の備えチェックリスト
選ぶとき
3つの役割と5つの条件で
- 避難時に移動へ使える携帯照明を確保している
- 両手を使う場面が多い人は、ヘッドライトを検討した
- 避難先や在宅避難でその場を照らす照明を検討した
- 照明をスマホのライトだけに頼っていない
- 明るさや点灯時間の数字だけで選んでいない
使えるか・点検
平時に確かめること
- 実際に点けて、モードを切り替えられることを確かめた
- 予備の電池が、照明の指定する種類・本数と合っている
- 乾電池の期限と液漏れ、充電式の残量と異常を確かめた
- 取り出しやすい位置に入れ、寝室などにも照明を置いている
- 家族が照明の場所と使い方を知っている
よくある失敗
- 照明をスマホのライトだけに頼る連絡や情報収集のための電池を使ってしまいます。
- ルーメンの数字だけで選ぶ何を照らしたいかによって、必要な光は違います。
- 電池を入れたまま長い間放置している液漏れで使えなくなっていることがあります。
- 予備の電池が照明に合っていない種類や本数が違うと使えません。
- 充電式の残量を確かめていないいざというときに点かないことがあります。
- リュックの奥底にしまっている暗い中で取り出すのに時間がかかります。
- 操作方法を知らないモードの切り替えなどで迷うことがあります。
- ランタンだけで移動まで兼ねる進む方向や足元を照らすのに向かない場合があります。
- 機能の多さだけで選ぶ重さや操作のしやすさも考えます。
- 最大点灯時間の数字だけで判断する使いたい明るさでの時間を確かめます。
よくある質問
防災リュックに懐中電灯は必要ですか?
懐中電灯とヘッドライトはどちらがいいですか?
ランタンは防災リュックに必要ですか?
スマホのライトがあれば懐中電灯はいりませんか?
防災用のライトは何ルーメンあればいいですか?
乾電池式と充電式、どちらがいいですか?
手回しやソーラーのライトがあれば安心ですか?
停電のとき、ろうそくを使ってもいいですか?
照明はどのくらいの頻度で点検すればいいですか?
まとめ
防災リュックには、停電や夜間の避難に備えて、持ち運べる照明を用意しておくことをおすすめします。懐中電灯・ヘッドライト・ランタンは、どれが一番かではなく、「進む」「両手を使う」「その場を照らす」の3つの役割で使い分けます。初期避難では、まず移動するための照明を優先し、必要に応じてほかの照明を加えます。
選ぶときは明るさの数字だけでなく、何を照らすか、両手が必要か、電源を保てるか、必要な時間使えるか、迷わず操作できるかで判断します。スマホのライトは補助として使い、照明は別に備えておきましょう。
今日、防災リュックのライトを取り出して、一度点けてみる。その小さな確認が、停電時や夜間避難で照明を実際に使える状態にしておく第一歩になります。防災を、『じぶんゴト』に。IPIC SONAEは、日々の見直しを通じた備えを提案しています。
AUTHOR / SUPERVISOR
執筆・監修|防災士 山根
アイピック株式会社所属。2024年に防災士資格を取得。IPIC SONAEで展開してきた製品すべての開発に携わり、商品開発で得た実務的な知見と防災士としての専門知識をもとに、防災情報を執筆・監修しています。
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