防災リュックに軍手・手袋は必要?避難時に手を守る備え方
防災リュックの中身を見ていると、軍手が入っていることがよくあります。「軍手が一双あれば十分?」「割れたガラスに触れるとき、軍手で大丈夫?」と気になったことはないでしょうか。
この記事の答えは明確です。防災リュックには、避難のときに手を守るための手袋を備えておくことをおすすめします。ただし、「軍手なら何でもよい」わけではありません。一般的な軍手は、荷物を運ぶ、軽い作業をするといった場面で手を守る基本の用品です。一方で、ガラス片や釘など鋭いものから守る性能を、一律に期待できるものではありません。手袋を「持つ・運ぶ」「鋭いものへの性能を確かめる」「衛生・応急手当」の3つの役割で整理し、自分に合う手袋の選び方をお伝えします。公的機関や試験機関の情報で確認できることと、IPIC SONAE編集部の提案は分けて示します。
この記事の結論
- 防災リュックには、避難のときに手を守る手袋を備えておくことをおすすめします
- 一般的な軍手は、荷物を持つ・運ぶ、軽い作業などで手を守る基本の候補です。ただし、ガラス片や釘などから守る性能を一律に期待しないでください
- 手袋は「持つ・運ぶ」「鋭いものへの性能を確かめる」「衛生・応急手当」の3つの役割で考えます。どれが一番強いかではなく、何に使うかで選びます
- 鋭いものへの備えを考えるなら、製品に表示された用途や性能を確かめます。性能の表示は「切れにくさの目安」であり、「切れない保証」ではありません
- 手袋があっても、割れたガラスや倒れかけた物には無理に触らないことが前提です
防災リュックに軍手・手袋は必要?
手袋は、防災リュックに備えておくことをおすすめします。避難のときは、荷物を持ち運んだり、散らかった物を少しどかしたりと、ふだん以上に手を使う場面が考えられるからです。
群馬県や千葉県船橋市の防災資料では、非常持ち出し品の例として軍手が挙げられています。船橋市のチェックリストには、軍手とは別の項目として「衛生用手袋・ゴム手袋」も並んでいます。
軍手と衛生用の手袋が別々に挙げられていることからも分かるように、手袋は種類によって役割が違います。何のために使う手袋なのかを意識すると、何をどこまで備えればよいかが見えてきます。
IPIC SONAE編集部の目安
これは公的な基準ではなく、編集部が実務上の考え方として示す目安です。家族の人数や避難の仕方に合わせて調整してください。
手袋より大切なこと|危ないものに無理に触らない
手袋の選び方の前に、確認しておきたいことがあります。手袋は、危ないものを安全に片付けられるようにする装備ではありません。
東京都の防災ポケットガイドは、地震で散らかった物でけがをしないよう、スリッパやスニーカーなどを身近に準備しておくことをすすめています。大阪市平野区の防災資料は、割れたガラスなどから足を守るために靴やスリッパを履くこと、ブロック塀やがれき、倒れかけた家屋などに注意すること、壊れた家には入らないことを呼びかけています。
手袋があることを、危険なものに近づく理由にしない
割れたガラス、釘、金属片、倒れかけた家具や建物などには、手袋をしていても無理に触らないでください。手袋は、避けられない場面で手を守るための備えです。がれきの片付けや撤去を、手袋さえあれば安全に行えるわけではありません。
手袋の3つの役割
防災で使う手袋は、次の3つの役割に分けると整理しやすくなります。
A 持つ・運ぶ・つかむ
主な候補:一般的な軍手、滑り止め付きの手袋
荷物を持つ、物を少し動かす、軽い作業をするときに手を守る
B 鋭いものへの性能を確かめる
主な候補:性能が表示された保護手袋
鋭いものに触れる可能性を考えるとき、表示された性能を確かめて選ぶ
C 衛生・応急手当
主な候補:使い捨ての手袋
応急手当のときなど、作業用とは別の目的で使う
Aの手袋でBやCの役割まで果たせるとは限りませんし、その逆も同じです。多くの人にとって、まず必要になるのはAです。Bは想定する場面がある人が追加で検討し、Cは作業用とは分けて用意します。Cの使い方は応急手当の範囲になるため、この記事では役割の違いだけを扱います。
手袋の種類と役割の違い
手袋の種類ごとに、主な役割と、期待しすぎないほうがよいことを整理しました。性能は製品によって大きく違うため、最終的には一つひとつの表示や説明で確かめてください。
手袋の素材(綿、合成繊維、ゴムの加工など)や厚さだけで、安全性を判断することはできません。厚手だから安全、革だから万能、ということはないため、表示されている用途と性能を確かめてください。防寒用の手袋の考え方は、防災リュックの中身は季節で変える?で扱っています。
一般的な軍手でできること・期待しすぎないこと
一般的な軍手は、防災の備えとして意味がないわけではありません。荷物を持つ、運ぶ、軽い作業をするときに手を覆って保護する基本用品として役立ちます。自治体の非常持ち出し品リストでも、軍手が挙げられている例があります。
一方で、一般的な軍手は、ガラス片や釘、金属片などの鋭いものから守ることを目的とした性能を、一律に備えているわけではありません。「軍手をしているからガラスをつかんでも大丈夫」とは考えないでください。鋭いものに触れる可能性を考えるなら、次の章の性能表示を確かめた手袋を検討します。
性能表示の見方|切れにくさの目安であり、保証ではない
保護手袋の中には、切れにくさや突き刺さりにくさなどの性能を、試験の結果として表示しているものがあります。
JIS T 8052:2026(ISO 13997:2024対応)は、鋭利物に対する切創抵抗性を測定する試験方法を規定しています。一方、機械的リスクに対する防護手袋では、EN 388:2016(ISO 23388:2018)などに基づき、耐摩耗性・耐切創性・耐引裂性・耐突刺性などが個別に評価されます。規格や試験結果は、製品の性能を確認するための材料であり、実際の使用環境で「切れない」「刺さらない」ことを保証するものではありません。
ここから分かるのは、次の3つです。
- 切れにくさ(耐切創性)と、突き刺さりにくさ(耐突刺性)は別の性能です。一方の評価だけでもう一方の性能を判断しないでください
- 表示された性能は規格で定められた試験条件で評価された結果です。どんな状況でも切れない、刺さらないことを保証するものではありません
- 数値や等級だけで防災向きかどうかは決まりません。想定する用途に必要な性能か、手のサイズや動かしやすさ、着けやすさも含めて確認します
性能が表示された手袋を選ぶときは、どの項目について、どの規格で、どのレベルなのかを製品の表示で確かめてください。そのうえで、危ないものに無理に触らないという前提は変わりません。
選ぶときの5つの条件
「軍手か、性能表示のある手袋か」の二択で考えるのではなく、次の5つの条件で選びます。
サイズと操作性|着けたまま動けるか
手袋は、手に合っていなければ役割を果たしにくくなります。大きすぎると物をつかみにくく、小さすぎると着けにくく、手が動かしにくくなります。実際に使う人の手に合うサイズかを確認してください。家族で共用する場合も、使用する人に合うかを平時に確かめます。
平時に一度着けて、次のことができるか確かめておきましょう。
- リュックを持ち上げ、背負うことができる
- リュックのファスナーやバックルを開け閉めできる
- ライトのスイッチを入れられる
- 着けたり外したりがすぐにできる
確認は、危ないものを使わずに、身の回りの安全な物で行ってください。子どもや高齢の家族は、サイズや着けやすさ、握りやすさを本人と一緒に確かめます。子どもの備えは子どもの防災リュックに必要なもの、高齢の家族の備えは高齢者の防災リュックに必要なもので解説しています。
収納と点検
左右をそろえて、取り出しやすく
手袋は、左右をそろえてまとめ、リュックの中でもすぐ取り出せる位置に入れておきます。必要になりそうな場面ですぐ着けられることが大切です。用途の違う手袋(作業用と衛生用など)は、分けて入れておくと迷いません。リュック全体の詰め方は防災リュックの詰め方を参考にしてください。
点検で見ること
- 破れ、穴、ほつれがないか
- 滑り止めなどの加工がはがれたり、硬くなったりしていないか
- 汚れや湿気、においがないか
- 今の手のサイズに合っているか(子どもは特に)
交換の時期は一律の年数ではなく、状態と、製品の説明を優先してください。リュック全体の見直し方は防災リュックはいつ見直す?で整理しています。用途ごとに手袋を足していくと、重さやかさも増えます。全体のバランスは防災リュックの重さは何kgまで?を参考にしてください。
IPIC SONAEの防災セットの場合
IPIC SONAEの「防災リュック 1人用47点セット」には、公式ページの内容物一覧によると「グローブ(軍手)」が含まれています。初期避難のときに、荷物を持つ、軽い作業をするといった場面で手を守ることを考える土台の一つです。
セットを用意したら、まず実際に着けて、手に合うか、着けたままリュックの開け閉めなどができるかを確かめてください。そのうえで、鋭いものに触れる可能性を考える場合や、応急手当用の手袋が必要な場合は、この記事の3つの役割に沿って追加を検討します。追加の手袋が全員に必要というわけではありません。
手袋は、リュックの中の決まった場所に入れておくと、慌てているときでも探さずに済みます。家族それぞれのリュックで、手袋の場所をそろえておくのもおすすめです。
初期避難の用品をまとめて準備したい方へ
グローブ(軍手)をはじめ、ライト、ラジオ、携帯簡易トイレなど、初期避難で使う用品を1人分まとめた「防災リュック 1人用47点セット」をご用意しています。準備の土台として、ご自身の手に合うか、必要な用途に足りているかを確かめてお使いください。
1人用47点セットを見る手袋の備えチェックリスト
選ぶとき
3つの役割と5つの条件で
- 実際に使う人の手に合う、持つ・運ぶための手袋を準備している
- 鋭いものへの備えが必要かを考え、必要なら性能の表示を確かめた
- 切れにくさと突き刺さりにくさを区別している
- 衛生・応急手当用の手袋を、作業用とは分けて用意している
- 防寒用の手袋を作業用と同じものと考えていない
使えるか・点検
平時に確かめること
- 実際に着けて、手に合うことを確かめた
- 着けたまま、リュックの開け閉めやライトの操作ができた
- 左右をそろえて、取り出しやすい位置に入れている
- 破れ、ほつれ、加工のはがれがない
- 子どもの手袋のサイズを見直した
よくある失敗
- 軍手なら鋭いものも安全だと思う一般的な軍手に、鋭いものから守る性能を一律に期待することはできません。
- 厚さだけで選ぶ厚手だから安全とは限りません。表示された用途と性能を確かめます。
- 切れにくさと突き刺さりにくさを同じだと思う別の試験項目です。
- サイズを確かめていない手に合わないと、守りにくく、動かしにくくなります。
- 家族全員が同じサイズ一人ひとりの手に合うものを用意します。
- 一度も着けたことがない着けたまま動けるか、平時に確かめます。
- リュックの奥底にしまっている必要なときにすぐ取り出せません。
- 防寒用の手袋を作業用と同じだと思う役割が違います。
- 使い捨ての手袋を作業用と同じだと思う目的が違います。
- 手袋があれば危ないものを片付けられると思う危ないものには無理に触らないことが前提です。
よくある質問
防災リュックに軍手は必要ですか?
普通の軍手で十分ですか?
耐切創手袋は必要ですか?
軍手で割れたガラスを触ってもいいですか?
滑り止め付きの手袋がいいですか?
使い捨ての手袋も必要ですか?
革の手袋なら安心ですか?
子ども用の手袋は必要ですか?
手袋は何双入れればいいですか?
手袋はいつ交換すればいいですか?
まとめ
防災リュックには、避難のときに手を守る手袋を備えておくことをおすすめします。一般的な軍手は、持つ・運ぶ、軽い作業などで手を守る基本の候補です。一方で、鋭いものから守る性能を一律に期待することはできません。
手袋は「持つ・運ぶ」「鋭いものへの性能を確かめる」「衛生・応急手当」の3つの役割で考え、何をするためか、性能が表示で確かめられるか、手に合うか、着けたまま動けるか、状態を保てるかの5つで選びます。そして、手袋があっても危ないものには無理に触らないことが前提です。
今日、防災リュックの手袋を一度着けて、リュックのファスナーを開けてみる。その小さな確認が、避難時に手袋を実際に使える状態にしておく第一歩になります。防災を、『じぶんゴト』に。IPIC SONAEは、日々の見直しを通じた備えを提案しています。
AUTHOR / SUPERVISOR
執筆・監修|防災士 山根
アイピック株式会社所属。2024年に防災士資格を取得。IPIC SONAEで展開してきた製品すべての開発に携わり、商品開発で得た実務的な知見と防災士としての専門知識をもとに、防災情報を執筆・監修しています。
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