防災リュックに救急セットは必要?応急手当用品はどこまで入れる?
防災リュックの中身を考えていると、救急セットをどこまで入れるかで迷うことがあります。家にある救急箱を丸ごと入れるべきか。ばんそうこうだけで足りるのか。消毒薬やピンセットは必要なのか。いざ考え始めると、候補はどんどん増えていきます。
この記事の答えは明確です。防災リュックには、けがへの初期対応や、医療機関・救護につながるまでを支える「基本的な救急用品」を備えておくことをおすすめします。ただし、家庭の救急箱を丸ごと持ち出す必要はありません。どこまで入れるかを決めるための考え方を、公的機関などの情報とIPIC SONAE編集部の提案を分けて整理します。なお、この記事は応急手当の方法を教えるものではなく、持ち出す用品を選ぶための記事です。
この記事の結論
- 防災リュックには、けがへの初期対応や、医療機関・救護につながるまでを支える基本的な救急用品を備えておくことをおすすめします
- ただし、家庭の救急箱や医療バッグを丸ごと持ち出す必要はありません。救急用品は、けがの手当を完結させるものではなく、医療につながるまでを支えるものです
- 救急用品は「共通の基本用品」「本人固有の薬や情報」「知識や訓練が必要な用品」の3つに分けて考えます。常用薬は、ばんそうこうなどの共通用品とは別枠です
- 入れるかどうかは、何に使うか説明できる、自分が扱える、すぐ取り出せる、期限や状態を保てるの4つで判断します
- 大量の出血や、出血が止まらないなど緊急性が高いときは、救急セットで何とかしようとせず、119番通報など適切な救急要請につなげます
防災リュックに救急セットは必要?
基本的な救急用品は、防災リュックに入れておくことをおすすめします。避難の途中や避難した直後は、割れたガラスやがれきで手を切るなど、軽いけがをする場面が考えられるからです。
首相官邸の防災情報では、非常時に持ち出すものの例として「救急用品(ばんそうこう、包帯、消毒液、常備薬など)」が挙げられています。
ただし、挙げられているのはあくまで例です。家庭の救急箱にあるものをすべて持ち出すことを求めているわけではありません。防災リュックは背負って避難するための荷物なので、初期避難で使う可能性が高く、自分で扱えるものに絞ることが大切です。
救急セットの役割|手当を完結させるものではない
防災リュックの救急用品は、けがを治すためのものではありません。軽いけがに対して傷を覆う、清潔を保つといった初期の対応をし、必要に応じて医療機関や救護所につなぐまでを支えるものです。
緊急性が高いときは、救急要請を
仙台市消防局は、大量に出血している場合や出血が止まらない場合、ショックの症状が見られる場合には、直ちに119番通報するよう案内しています。救急セットがあるからといって、医療機関や救急隊に頼らずに済むわけではありません。災害時は通報がつながりにくいこともあるため、周りの人や避難所の救護担当などにも助けを求めてください。
この役割を押さえておくと、「念のため」で用品を増やしすぎることを防げます。防災リュックに求めるのは、医療の代わりではなく、医療につなぐまでの備えです。
救急用品を3つに分けて考える
救急用品は、次の3つに分けて考えると、何を入れるか判断しやすくなります。
A 共通の基本用品|多くの人に共通して役立つもの
軽いけがへの初期対応などに使う、比較的使い道の広い用品。
B 本人固有|その人に欠かせない薬や情報
共通の救急セットとは混ぜず、本人ごとに用意するもの。
C 知識や訓練が必要|扱い方を学んだ人向けのもの
正しい使い方を知らないと、かえって危険になることがある用品。
救急セットというと、Aの用品を思い浮かべる方が多いでしょう。けれど、多くの人にとって避難時に欠かせないのは、Bの常用薬や服薬情報であることも少なくありません。共通の救急用品と本人固有の薬・情報は区別し、常用薬などは誰のものか分かり、必要なときに取り出せる形で管理します。Cは「高機能だから入れる」のではなく、扱える人がいるかで判断します。
入れるかどうかは4つの条件で決める
「救急セットに何点入れるか」ではなく、一つひとつの用品について、次の4つを満たすかで判断します。
① 用途を説明できる
何に使うか
どんな場面で、何のために使うかを説明できる
② 自分が扱える
使い方を知っているか
正しい使い方を理解し、必要時に製品表示や説明書を確認できる
③ すぐ取り出せる
置き場所
リュックの奥に埋もれず、必要なときに出せる
④ 状態を保てる
期限・包装
期限や包装、汚れや湿気を点検し続けられる
4つのうち一つでも満たさない用品は、入れる前に考え直す余地があります。たとえば使い方を知らない用品は、②を満たすよう学ぶか、入れるのを見送るかを選びます。この4条件は、この先の章で用品ごとに当てはめていきます。
基本用品の用途と確認点
共通の基本用品について、主な用途と確認したい点を整理します。すべてを入れる必要はなく、4条件に照らして選んでください。
三角巾は「使い方を知っているか」が分かれ目
日本赤十字社は、三角巾について、傷の大きさに応じて使え、広い範囲の傷や関節を包帯したり、手や腕を吊ったりするのに適しているとしています。包帯の前には、傷に適当な大きさと厚みのある保護ガーゼを当てるとしています。名古屋市消防局は、滅菌処理されているもの以外の三角巾を直接傷口に当てないよう案内しています。
三角巾は一枚で用途が広い一方、たたみ方や結び方を知らないと使いこなすのが難しい用品です。入れるなら、講習などで使い方を一度学んでおくと、4条件の「自分が扱える」を満たせます。三角巾の使い方を知っていれば、ふろしきやスカーフで代用できることも、日本赤十字社は紹介しています。
手袋は「血液に直接触れない」ためのもの
仙台市消防局は、出血の手当をするとき、感染防止のため血液に直接触れないよう、できるだけニトリル製やゴム製の手袋を使い、ビニール袋で代用することもできると案内しています。作業用の軍手とは役割が違うため、別のものとして考えます。
消毒薬は一律に決めない
首相官邸の持ち出し品の例には消毒液も挙げられています。防災リュックへ入れる場合は、製品表示に従って使えるか、期限や保管条件を管理できるかを確認します。傷の手当の方法に迷うときは、医療機関や薬剤師に相談してください。
常用薬と医療情報は救急セットとは別枠で
常用薬は、救急セットの一部ではなく、本人固有の備えとして別に考えます。何日分をどう用意するかは、薬の種類や処方の内容、保管の条件によって違います。この記事では日数を一律に決めず、次の点を確かめることをおすすめします。
- 持ち出し用の薬の用意や保管方法について、医師や薬剤師に相談したか
- 処方が変わったとき、持ち出し用の薬や情報も入れ替えたか
- 薬の期限と保管の状態
薬の量や飲み方を自己判断で変えない
持ち出し用だからといって、薬を自己判断で増やしたり、飲み方を変えたり、中断したりしないでください。この記事は薬の扱いを指示するものではありません。
医療情報は、必要な分を、見せる相手を選べる形で
アレルギー、飲んでいる薬、持病、緊急連絡先などの情報は、避難先で周りの人や救護担当に伝える助けになります。一方で、これらは大切な個人情報でもあります。必要な情報に絞って紙にまとめ、リュックの内側にしまうなど、外から見えない形で持つようにしましょう。常用薬や服薬情報の備え方は、高齢者の防災リュックに必要なもので詳しく解説しています。
知識や訓練が必要な用品|「高機能だから」で入れない
救急用品の中には、正しい使い方を学んでいないと、かえって危険になるものがあります。
仙台市消防局は、止血の基本は出血部位を直接押さえる直接圧迫止血法であるとしたうえで、包帯などを使った即席の止血帯で手足の付け根を縛る方法は、神経などを痛める場合があるため、そのための訓練を受けた人以外は行わないよう案内しています。
専門的な止血器具などは、製品や手技によって必要な知識・訓練が異なります。「高機能だから」「念のため」という理由だけで一般家庭の防災リュックへ追加するのではなく、公式の講習などで扱い方を学んだうえで判断します。まずは、基本となる応急手当を公的機関等の講習で学んでおくことが大切です。
初期避難での優先度|「不要」ではなく「優先順位」
家庭の救急箱にあるものが不要というわけではありません。ただ、背負って避難するリュックでは、優先順位をつけて絞り込む必要があります。
救急用品を増やしすぎてリュックが重くなった場合は、全体の重さとあわせて見直してください。重さの考え方は防災リュックの重さは何kgまで?で解説しています。
収納|一つのポーチにまとめ、すぐ取り出せる位置へ
救急用品は、リュックの中でばらばらにせず、一つのポーチなどにまとめておきます。けがをしたときに、中身を全部出さなくても取り出せることが大切です。
- 救急用品を一つのポーチにまとめている
- リュックの奥底ではなく、取り出しやすい位置に入れている
- 常用薬は、共通の救急ポーチとは分けて、本人ごとに分かるようにしている
- 家族が、救急ポーチと薬がどこにあるかを知っている
リュック全体の詰め方は、防災リュックの詰め方を参考にしてください。
点検のポイント|期限・包装・湿気
救急用品は、見た目では状態が分かりにくいものもあります。防災リュックの点検のときに、次の点を確かめます。
- 医薬品や衛生用品に表示された期限
- 包装の破れや開封の跡がないか
- 汚れや湿気、においの変化がないか
- 常用薬が、今の処方と合っているか
交換の時期は一律の年数ではなく、それぞれの表示を優先してください。リュック全体の見直し方は、防災リュックはいつ見直す?で整理しています。
平時に学んでおく|用品より先に知識を
救急用品は、使い方を知っていて初めて役立ちます。この記事だけで応急手当ができるようになるわけではありません。
日本赤十字社は、救急法の講習を各地で開いており、三角巾の使い方や止血の方法などを学べます。動画で手当の方法を紹介するページもあります。お住まいの地域の消防本部も、救命講習などを行っていることがあります。4条件の「自分が扱える」を満たすために、こうした公式の機会を活用してみてください。
IPIC SONAEの防災セットの場合
IPIC SONAEの「防災リュック 1人用47点セット」には、初期避難の用品に加えて、救急に関連する用品も一部含まれています。公式ページの内容物一覧で確認できるのは、次のとおりです。
セットを用意したら、救急に関連する用品が4条件を満たしているかを確かめてください。たとえば三角巾は、使い方を一度学んでおくと役立てやすくなります。必要な救急用品は、本人の状況や扱える知識、避難の条件によって変わります。セットを土台にして、本人固有の薬や情報を加えてください。
防災セットの中身は、多くの人に共通する初期避難の用品をまとめたものです。常用薬のように一人ひとり内容が違うものは、セットにあらかじめ入れることができません。救急用品についても、セットに含まれる共通の用品と、本人が用意する薬や情報を分けて考えていただくことで、抜けを減らせます。
基本の防災用品をまとめて準備したい方へ
保存水や保存食、ライト、ラジオ、携帯簡易トイレなどの初期避難の用品に加え、三角巾やばんそうこうなど救急に関連する用品も一部含む「防災リュック 1人用47点セット」をご用意しています。準備の土台として、常用薬などご自身に必要なものを加えてお使いください。
1人用47点セットを見る救急用品のチェックリスト
A 共通の基本用品
救急ポーチにまとめるもの
- 入れている用品の用途を、それぞれ説明できる
- 使い方を知らない用品は、学ぶか入れるのを見送った
- 手当のときに血液に直接触れないための手袋やビニール袋がある
- 救急ポーチをリュックの取り出しやすい位置に入れている
- 期限、包装の破れ、湿気や汚れを確かめた
B 本人固有・C 知識が必要
本人ごとに確かめること
- 常用薬を共通の救急ポーチとは分けて用意している
- 持ち出し用の薬について、医師や薬剤師に相談した
- 処方が変わったとき、持ち出し用の薬や情報も入れ替えた
- アレルギーや服薬の情報を、外から見えない形で持っている
- 専門的な器具は、使い方を学んだ人がいる場合だけにしている
よくある失敗
- 家庭の救急箱を丸ごと入れる重くなり、必要なものが探しにくくなります。初期避難で使うものに絞ります。
- 用途の分からない用品が入っている何に使うか説明できないものは、使えない可能性があります。
- 常用薬と共通の救急用品を混ぜている薬の期限や処方の変更に気づきにくくなります。
- 期限や包装を確かめていない包装が破れていると、清潔に使えないことがあります。
- リュックの奥底にしまっているけがをしたときに、すぐ取り出せません。
- 家族が置き場所を知らない本人以外が手当をするとき、見つけられません。
- 根拠なく必須と思い込んで入れる消毒薬などは、使い方と保管を確かめたうえで判断します。
- 専門的な器具を「念のため」で入れる扱い方を学んでいなければ、使うことで危険になる場合があります。
- 救急セットがあれば医療は不要と思う救急用品は、医療につなぐまでの備えです。
- 処方が変わった後も古い薬のまま処方の変更にあわせて入れ替えます。
よくある質問
防災リュックに救急セットは必要ですか?
救急セットには何を入れればいいですか?
家の救急箱をそのまま入れてもいいですか?
常用薬も救急セットに入れていいですか?
消毒薬は必要ですか?
三角巾は何に使いますか?
手袋は軍手でもいいですか?
止血帯は入れておいたほうがいいですか?
救急用品はいつ点検すればいいですか?
まとめ
防災リュックには、けがへの初期対応や、医療機関・救護につながるまでを支える基本的な救急用品を備えておくことをおすすめします。ただし、家庭の救急箱を丸ごと持ち出す必要はありません。救急用品は手当を完結させるものではなく、医療につなぐまでを支えるものです。
救急用品は、共通の基本用品、本人固有の薬や情報、知識や訓練が必要な用品の3つに分け、用途を説明できる、自分が扱える、すぐ取り出せる、状態を保てる、の4つで入れるかを決めます。そして、用品をそろえるのと同じくらい、使い方を学んでおくことが大切です。
今日、防災リュックの救急用品を出して、一つずつ「何に使うか」を確かめてみる。その小さな確認が、必要なときに救急用品を実際に使える状態にしておく第一歩になります。防災を、『じぶんゴト』に。IPIC SONAEは、日々の見直しを通じた備えを提案しています。
AUTHOR / SUPERVISOR
執筆・監修|防災士 山根
アイピック株式会社所属。2024年に防災士資格を取得。IPIC SONAEで展開してきた製品すべての開発に携わり、商品開発で得た実務的な知見と防災士としての専門知識をもとに、防災情報を執筆・監修しています。
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